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次世代太陽電池「ペロブスカイト」…国際競争に勝つために〝オールジャパン体制〟を

ペロブスカイト太陽電池-勝ち筋を探る #2 有機系太陽電池技術研究組合(RATO)・田中千秋理事長

国内外で研究開発が活発化する「ペロブスカイト太陽電池」。日本企業がその市場を勝ち抜くために必要な取り組みは何か。積水化学工業東芝エネルギーシステムズなどが参画し、ペロブスカイト太陽電池の社会実装を目指す企業連合「有機系太陽電池技術研究組合(RATO)」の田中千秋理事長に聞いた。(聞き手・葭本隆太)

―研究開発の現状をどう見ていますか。
 メーカー各社は変換効率の向上と耐久性の向上を最大の目標に研究開発しつつ、同時にその性能を維持しながら大面積で量産する技術を確立する段階入っています。RATOに参加する積水化学を筆頭に、事業化は目前に来ています。(積水化学は)フィルムを基盤に使ったタイプで変換効率15%、耐久性10年相当の性能を実現しており、さらなる性能の向上も確実に実現できると見ています。

ペロブスカイト太陽電池は(ヨウ素など)大半の原材料や主要副資材がすべて国産品で調達できる最大の武器があり、将来的に安定した量産が期待できます。

―市場の将来性は。
 (富士経済が2023年3月発表した)市場調査報告では「世界市場が2035年に1兆円」と予想しています。ペロブスカイト太陽電池は、現在主流のシリコン太陽電池と異なり、薄いフィルム上に作れるため、軽く曲げることが可能です。その性能や形状からより広い用途で利用できるでしょう。(新たな用途としては)例として(農園のビニールハウスに設置する)農業用や車載用などが考えられます。

―海外の研究開発も活発です。
 中国は大規模投資でペロブスカイト太陽電池の製造工場を作り始めており、「中国が先行」という報道がありますが、試作品の性能は確認できておらず、実際の量産品は未だ市場に出ていません。欧州の企業についても生産を一部開始したという情報もありますが、社会実装レベルに達している製品の公表は少ないのが現状です。(それらを踏まえると)日本は決して遅れを取っているとは言えません。

―日本の強みはどこにありますか。
 まず、主要原料となる高純度ヨウ素の国内生産が可能です。日本のヨウ素生産量は世界2位のシェア30%を持っており、埋蔵量が世界一で他国に依存する必要がありません。無機ヨウ化物の高純度・低含水率などの性能レベルは、ペロブスカイト太陽電池の光電変換効率や耐久性などの品質に影響します。ほかにも、高性能な素材を提供できる化学メーカーが多く存在しており、フィルムや金属・ガラスなどの素材を調達する際に日本製を選定しなければ十分な性能が得られない場合があります。フィルム加工技術や塗布製造装置、プロセスにおいても日本の高い技術が発揮できます。(それらを生かすことで)世界のトップレベルの競争力は維持できます。

―そうした強みを生かすために必要な取り組みは。
 「オールジャパン体制」の構築です。化学メーカーからの材料供給体制のほか、(積水化学や東芝エネルギーシステムズなどの)製品メーカー同士も技術協力する体制が必要でしょう。(壁面設置や車載など)ペロブスカイト太陽電池は用途によって求められる技術は異なるため、そうした部分を補完し合うべきです。オールジャパン体制を構築して研究開発を加速させなければ、中国などとの国際競争に遅れてしまうという危機感を持つべきです。

-政府に期待することは。
 企業同士の技術協力を促して欲しいです。政府による研究開発の支援は(各メーカーによる)複数のプロジェクトにバラバラに行われることが多いですが、(オールジャパン体制で研究開発を推進するためにも)国家プロジェクトとして一体化してほしいと思います。

―RATOとして推進することは。
 RATOは主要の製造メーカーが中核を形成しているほか、原料メーカー、各種素材メーカー、計測装置メーカー、建設会社、道路照明会社など多方面の企業が参画しています。上流から下流までの(企業の)連携の場として機能します。ただ、メンバー間の連携はまだ弱く、これを強くしたいと思います。(そこで)23年度からは月1回、情報交換会を開き、国内外の動向についての情報共有や分析などをしています。

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