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“頭脳を持つ”モータをいち早く製品化    ―カスタムメイドで設計から一貫体制で差別化

理工系×企業ジョブマッチング/ソフトロニクス
記者の目/ここに注目
□常に最先端のモノづくりにチャレンジできる
□バーチャルとリアルの接点・サーボモータの可能性は無限大
代表取締役社長 菱沼 恵一さん

標準製品そのままの販売が主流の大手モータメーカーとは対極に、世界で唯一のカスタムメイドのサーボモータを生み出しているのがソフトロニクスだ。顧客は、「これまでにない」モータを求めて同社に相談にやってくる。例えば1秒に1つ握れる“寿司マシン”や、病院で使用される検体搬送システムのベルトコンベアなどに内蔵されたモータは、見えない部分ではあるものの、高度な制御技術が求められる機械にはなくてはならない存在だ。 「相談に来られるお客さま自身も、どんなモータが必要なのか表現できない場合が多々あり、それを私たちが引き出していきます。やりとりを繰り返しながら、モノづくりの冒険ができるのがモータならではです」と、創業者の宇塚光男会長はモータづくりのおもしろさを熱く語る。菱沼恵一社長は「動きのイメージを技術で形に落とし込んでいく」醍醐味が、モータづくりにあるという。

さいたま市のリーディングエッジ企業に認定

同社は、位置や速度などを制御できたり、回路が内蔵されていたりと、時代の進化に合わせて“頭脳を持つ”機能的なモータを製品化してきた。メカトロニクスとエレクトロニクスの技術をソフトウェアで融合し、ロボット化が進む時代にいち早く対応してきたのである。2010年にはさいたま市が独創性・革新性に優れた技術を持つ市内の研究開発型モノづくり企業を認定する「さいたま市リーディングエッジ企業」にも選出され、その技術力は折り紙付きだ。

「世の中のニーズに合わせた新たなモータ、つまり常に新しいものをつくっている会社です。そのため、技術者の活躍が絶対的に必要です。とはいえそれは簡単にできることではありません。数学、物理、電気回路、振動工学など、さまざまな知識が必要です。逆にいえば、これまで学んできたことを存分に発揮できる仕事です。学びを応用して新しいものをつくってみたい人や、ものを分解して仕組みを探求することに喜びを感じてきた人はとくに大歓迎です」(宇塚会長)

小型サーボモータA1-SV35RおよびA1-SV35Rギア付きタイプ
ギアヘッド搭載サーボモータA1-OT8R+MG80Sおよび A1-SQ7R+MG80S

求む!AIモータづくりに意欲ある人

入社後半年間は、専門に限らず、加工研修、組立て研修、電気回路研修など幅広く実務研修を行う。菱沼社長によると「すべて一人でやりたいことができるようになるため」だ。すなわち専門+幅広い技術を修得することが可能で、数年かけて一人前となっていく。風通しがよい社風で、先輩後輩関係なく、わからないところは気軽に聞き合えることが、さらなる技術力の研鑽にもつながっている。

能力に応じて支給される「特別手当」を導入しており、それにより社員のモチベーションも高い。2024年度からは「奨学金代理返還制度」を導入予定だ。毎年の国内旅行のほか、5年ごとに海外社員旅行を実施するなど福利厚生も整っている。

「今後はA I(人工知能)をモータに取り入れて “AI内蔵モータ”を製品化していきたい。たとえば、ロボットのアームがモノをつかむときに、豆腐なのかリンゴなのかで握る力は異なるので、そのセンサの波形をA Iチップでキャッチして握力を認識できるようなモータをつくりたいのです。そんな最先端技術へのチャレンジを、若い人に任せていきたいと考えています」(宇塚会長)

バーチャルとリアルをつなぐのがサーボモータであり、人手不足でロボット需要が高まる中、その需要も増加していくだろう。未来に向けた技術の可能性が詰まった会社といえそうだ。

若手社員に聞く
専門外の技術も習得できる

TSM部 安達 智明さん(2022年入社)

出荷にあたっての検査や耐久試験などを主に手がけています。電気系学部出身のため、その学びを活かしたいと考えて入社しました。他社に比べ、フランクな雰囲気やトップの決断の早さなどが突出していたことが、入社を決めた理由です。電気系の業務だけでなく、どういう形の治具にするか、材料発注、穴開け、組立てなど畑違いのことまで取り組ませていただき、それが想像していた以上におもしろいという経験をしました。いろんな業務が体験でき、できることが増えるので成長実感があります。




貴重な「創業当初の名残り」が味わえる


TSM部 石井 真範さん(2021年入社)

前職の電気回路系の仕事からシステム系に転向しようと、通学した職業訓練学校で求人を知り、会長のユニークさに惹かれて入社しました。技術力はもちろん、素早い経営判断など学ぶべき点がたくさんあります。「今までの経験を活かして新しいことができる」と言われた通り、特機モータのソフトの書き換えが主業務ですが、マーケティングや新規事業など幅広く任されており、やりがいがあります。タイムカード、出勤札など創業当初の名残りを味わえるのも当社ならではです。

会社DATA
所在地  埼玉県さいたま市桜区山久保1-8-2
設立   1983年6月1日
代表者  菱沼 恵一
資本金  1000万円
従業員数 46人
事業内容 精密小型モータ、モータ応用機器、メカトロニクス機器の開発、製造、販売
URL   http://www.softronics.co.jp/

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