フッ素樹脂と銅薄膜接合…プラズマ処理と熱圧着で可能に、魁半導体が今夏実現
魁半導体(京都市下京区、田口貢士社長)は、フッ素樹脂(PTFE)基板と銅薄膜の接合を独自のプラズマ処理と熱圧着で可能にする技術開発を始めた。すでに真空環境での接合技術は確立済み。より実用的な通常の大気圧での接合を今夏に実現し、基板市場に提供する計画。誘電損失が小さく、配線遅延を削減するPTFE基板は第5世代通信(5G)の次の6G以降向けで注目されるが、平滑度が高いため回路形成に接着剤が使えない課題があった。
真空でPTFE基板と銅薄膜の接合面、それぞれをプラズマ処理で活性化。水酸基(OH基)系のガス原料を散布し、厚みが分子1個分の自己組織化単分子膜(SAM)をそれぞれ形成して、ヒートロールで熱圧着すると、OH基同士が脱水縮合してしっかりと接合する仕組み。
この真空で実現した独自のSAM形成技術を、大気圧環境でも再現して実用化する。このため、課題となるプラズマ処理制御や、ガス原料吹きつけ時の周囲環境の制御を、原料を吹き出す管路の形状工夫や、局所排気などで克服する方針。すでに複数企業から問い合わせもあるという。
魁半導体はプラズマ装置メーカー。今回の開発過程でフィルム2枚をプラズマ処理してから熱圧着すると、ヒートロールが低温でも高い圧着強度を得られることも発見した。貼り合わせ面に同処理を施すと、ロール温度70度Cでも、普通に110度Cで圧着した時と同等強度になる。電子部品の除電フィルム包装などで低温圧着できれば、熱ダメージ低減や歩留まり改善になる。そこで先行して月内に派生開発品「大気圧ダイレクトプラズマフィルム圧着装置」を消費税抜き価格2000万円で発売。貼り合わせ業界に提案する。
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日刊工業新聞 2024年01月22日