東海8国立大学が連携、革新創出へ生かす多彩なリソース
国際的な魅力形成、産業界と共同事業検討
東海4県(愛知、岐阜、三重、静岡)の7国立大学法人8大学が、研究や産学連携を進めるプラットフォーム(枠組み)を立ち上げた。連携の成果を広く地域に還元するため、経済団体、自治体などを巻き込みながら地域と一体となった「面」連携を模索する構えだ。東海地域に集積する自動車産業をはじめとする製造業は、かつてない変革期を迎えている。多様な課題、要請を拾い上げ、地域イノベーションの創出を後押しする。(名古屋・鈴木俊彦)
連携の枠組みとして立ち上げたのは「東海地域・国立大学連携プラットフォーム(C―FRONT)」。参加する国立大学は静岡大学、浜松医科大学、岐阜大学、名古屋大学、愛知教育大学、名古屋工業大学、豊橋技術科学大学、三重大学。
大学に対する産業界、社会からの要請は多岐にわたる。世界的な生産年齢人口の減少を背景とした人材獲得もその一つ。日本の若者の海外流出を食い止める一方で、海外の優秀な留学生獲得での貢献が求められるようになった。C―FRONTは各大学の強み、特徴を発揮しながら地域として一つにまとまることで、国際的に魅力ある大学群を形成していく考えだ。
各大学のトップが参加する学長懇談会を継続的に開催。9日に名古屋市内で第1回を開き、留学生の獲得や定着など国際競争力を高める施策に加え、経済団体や国の出先機関、自治体との共同プロジェクトの推進などを討議した。
参加大学のうち、静岡大と浜松医科大は再編・統合問題を抱える。そうした中でのC―FRONT立ち上げについて、各大学に連携を呼びかけた東海国立大学機構の松尾清一機構長は「メリットはハードルが低いこと」と説明。トップ同士が直接、意見交換することで「可能なところから連携を進めていきたい」とスピード感を強調する。
具体的な連携活動については個別にテーマを設定し、参加を希望する大学で構成するタスクフォース(特別作業班)が推進する。スタートアップ、バイオテクノロジー、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)などが例として挙がっている。
八つの国立大それぞれのリソースは多彩だ。「光科学研究が1丁目1番地」(日詰一幸静岡大学長)、「ライフサイエンス、モノづくり、環境・エネルギーが強み」(吉田和弘岐阜大学長)、「トンガリ(起業家育成プロジェクト)を一緒に進めたい」(杉山直名大総長)など各大学のトップは一様に意気込む。
長期的な視野で東海地域を見た場合、松尾機構長は「モノづくり産業が集積し、国際的企業が本社、研究拠点を構えている。人間中心の未来社会を作っていけるポテンシャルを持っている」と見通す。さらに「10年後には社会も大きく変わるだろう。大学の機能を全体として維持強化し、社会に貢献していくことが今ほど期待されている時はない」と大学の置かれた状況を意識する。地域の知の拠点としてイノベーションを継続的に創出していけるか、真価が問われている。