ビジネスジェット利用の富裕層呼び込め、海外10事例調査で分かったこと
国土交通省はビジネスジェットを利用する海外富裕層を本格的に誘客するため、海外10地域の事例を調査し取りまとめた。新型コロナウイルス感染症で世界の航空需要が激減する中、ビジネスジェットの変動幅は小さかった。コロナ禍が一段落し移動ニーズがさらに高まる富裕層の取り込みを狙い、国内でのシームレスな移動など受け入れ態勢構築の基礎資料とする。地方誘客のためのコンテンツ整備などの課題も整理し、地方振興にもつなげたい考え。
調査は国土交通政策研究所が2022―23年度の2カ年で実施、22年度分の中間報告を出した。欧米、アジア、南米の観光都市からイビサ(スペイン)、シチリア(イタリア)、サンモリッツ(スイス)、アスペン(米国)、プーケット(タイ)、バリ(インドネシア)、ニュージーランド全域、パタゴニア(アルゼンチン・チリ)、コスタリカ全域、ロスカボス(メキシコ)を調査した。空港での受け入れ態勢、滞在価値、宿泊施設、2次交通、ガイド、売り込み方法の5項目で整理した。
調査した全地域の空港で、運航支援事業者(FOB)がコンシェルジュサービスや専用施設を提供している。滞在価値では複合的な自然や遺産、文化や生活スタイルに加え、クラブカルチャーに特化し差別化した例(イビサ)もある。宿泊は高級ホテルのスイートルームや一棟貸しヴィラが標準でソフト面の充実がポイント。2次交通ではシームレスに移動するための高級送迎車やヘリコプターのほか、ヨットも利用されている。ガイドでは観光以外のプロ人材の育成が目立ち、乳幼児教育専門サービス(サンモリッツ)などがある。売り込みでは国と地域一体となった取り組みが多く、富裕層向けのビザ発給(プーケット)などがあった。
また調査した欧米の観光地では、ビジネスジェットで来る富裕層の大多数が同国内か近隣国から来ていることが判明した。23年度は国内の地方空港での2次交通を中心に、空港利用の活性化と地域振興に向けた方策を調査している。