成田国際空港で巡回中、警備ロボット「ココボ」のはたらき
成田国際空港は2022年に空港第2ターミナル内でセコムの巡回警備ロボット「cocobo(ココボ)」を導入した。人や障害物を避けて自律走行しながら人工知能(AI)で混雑状況などを検知し、監視員への通知や利用者への声かけを行う。新型コロナウイルス感染症の水際対策が緩和され旅客数が回復する中、人とロボットの協働により、警備員の負担軽減と緊急時対応の強化による安全性向上が期待される。(千葉・苦瓜朋子)
成田国際空港はコロナ禍からの回復に加え、29年にC滑走路を完成予定で、さらなる旅客数増が見込まれる。このような背景もあり、22―24年度の中期経営計画でロボット活用による警備強化と省人化を掲げ、先端技術の活用を進めている。
19年には第1、第2ターミナルで「セコムロボットX2」を4台、20年には第3ターミナルでシークセンス(東京都中央区)製「SQ―2」を1台稼働。全てのターミナルで警備ロボットが活躍する。ココボは20年から試行し、必要な機能を検討した上で国内第1号として導入した。
ココボは幅700ミリ×奥行き1200ミリ×高さ1250ミリメートル。第2ターミナル内でも特に混雑しやすい3階出発ロビーで利用している。最大の特徴は、映像やセンサー情報をAIで分析し、リアルタイムで混雑状況や放置物、転倒者を検知できることだ。
これらの異常を検知すると、中央監視室の監視員に音やランプで知らせる。通知を受けた監視員は音声での整列の呼びかけ、常駐の警備員を現場に向かうよう指示するなどの対応を取る。
前後2カ所に搭載した接触防止センサーで人やモノを検知して避けながら、事前に設定したルート上を時速4キロメートル以下で進んでいく。走行中は「巡回警備中です」と自動音声でアナウンスするほか、側面のディスプレーに4カ国語で表示する。
利用者の多い6―24時の間に2時間ずつ稼働と充電を繰り返して運用する。充電スタンドまで自走し、充電中も周辺を定点撮影する。自律走行式だが、状況に応じて手動運転に切り替えられる。
巡回警備の一部をロボットで代替することで、警備員は地震時の避難誘導や利用者間のトラブル対応など、人の判断が必要な緊急時対応に時間を割くことができる。
さらなる効率化に向けて、24年にはココボを1台追加導入する予定。「防災訓練で避難誘導に活用した経験から、災害時の緊急対応にも応用できないか検討している」(空港運用部門保安警備部警備調整グループの八重樫彰マネージャー)といい、セコムと共同で用途拡大を探る。
労働力不足を補うため、将来は自動運転モビリティーや清掃ロボット、案内ロボットなどさまざまなロボットが空港内を行き交うことが予想される。「現在はエリアを分けて運用しているので問題ないが、今後はロボット同士がぶつからず協働する方法を検討する必要がある」と八重樫マネージャーは話す。