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「環境対策を“義務感”でやっている企業が少なくない」―日本版気候若者会議に学ぶ“対話”

「環境対策を“義務感”でやっている企業が少なくない」―日本版気候若者会議に学ぶ“対話”

(左から)遠山さん、稲野辺さん 鈴木さん、西田さん(23年12月14日撮影)

若者100人が集まり、環境政策への提言をつくる「日本版気候若者会議」が2021年から活動している。23年は8月から議論を重ね、「気候変動省」の設置などを求める提言を各政党や経団連、農林水産省に提出した。また、次期エネルギー基本計画を決める有識者会議への若者の参加も求め、署名活動も展開している。会議メンバーの4人に政策提言にかける思いや、若者が発言しやすい企業について語ってもらった。(モデレーター=編集委員・松木喬)

◆日本版気候若者会議とは
 深刻化する気候変動の被害を受ける若者世代の声を政策に反映させようと提言をつくる。市民が政策を議論し、民主主義を補う欧州の「市民会議」がモデル。フランスでは市民会議の意見が気候変動対策の法制化につながった事例がある。

娘のために市民会議を提案

西田吉蔵さん

―まず、西田さんに気候若者会議を立ち上げた経緯をお聞きします。
 西田さん 19年に高校生(当時)の環境活動家、グレタ・トゥーンベリさんの姿を見て、自分の高校時代を思い出した。そして気候変動を放置すると10数年後、自分の娘に何と言われるだろうと考えた。20年1月にフランスの市民会議を知り、日本でもやりたいと環境省に提案した。すぐ実現するのは難しそうだったので、若者から始めようと多くの団体に声をかけ、気候若者会議を始めた。

―気候若者会議に関わるようになった理由を教えてください。
 鈴木さん 前職の教員時代、コロナ禍で休校となった時、気候変動問題に関心を持った。自分は何ができるのか考え、気候若者会議に参加した。
 遠山さん 高校生の時、SDGs(持続可能な開発目標)を学び、貧困問題に衝撃を受けた。私も何かしたいと思い、若者の声を国際会議に届ける「持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)」に入り、気候若者会議にも参加するようになった。
 稲野辺さん 社会や環境の課題解決を考えると、「政治」にぶち当たる。1人で声を上げるよりも影響力があると思って気候若者会議に参加した。だが、私たちの声は簡単には政策に反映されない。そこで政治家などに提言を渡す手交に関わろうと、23年から気候若者会議の事務局に加わった。

―気候若者会議での役割や目標を教えて下さい。
 遠山さん JYPSで政策提言を実行しているので、その経験を気候若者会議に提供したい。ユースと言っても意見は多様なので、どう包括して発信するのかが課題と感じる。
 稲野辺さん どういうテーマで、どういう目的で議論すべきか、事務局として時間をかけて話し合っている。23年は、より影響力を意識していた。手交して終わりではない。政策への反映がゴールではあるが、道半ば。オンライン署名も集め、多くの若者の声であることを伝えようと活動している。

鈴木良壽さん

鈴木さん 私は21年の第1回の気候若者会議に10日間参加し、2回目以降は事務局に携わる。参加者のモチベーションを高めながら、エンパワー(能力を発揮)させ続ける。そうしないと提言をつくる大変さに押しつぶされる。楽しかった気持ちを持ち帰ることも大切だと思っている。

―事務局として参加者の声を集約するとなると、自身の意見を抑えることになるのでは。
 西田さん 若者らしい“とがった”意見と、現実性のある意見の両方をやろうと話をしたことがある。提言は批判ではない。解決策であり、対話のきっかけだ。

―手応えは。
 稲野辺さん 政府や団体が手交の時間を確保しくれるようになった。だが、私たちは「ご苦労さま」と言われたいわけではない。次の議論につながる意見をもらいたい。23年は「検討します」と言ってもらえるようになった。“何年後”に検討してもらえるかが問題だ。
 鈴木さん 「提言は対話のきっかけ」という話があったが、若者は対話の経験値が足りない。提出先と2回、3回と対話をし、一緒に政策をつくるということもあるだろう。

中小・自治体・市民、調整必要

―気候変動政策に関心がある皆さんから、企業や政府はどのように見えていますか。
 鈴木さん 積極的な中小企業がある一方で、周囲が追随できていないと感じることがある。スピード感や“見えている景色”の違いの調整が必要だろう。例えば企業の新サービスや新技術と、自治体の目標とが釣り合っていない。市民も追い付いていない。

企業も政府も野心的な目標を

稲野辺海さん

稲野辺さん 企業も政府も、もっと野心的な目標を設定し、誰かに言われる前に具体的な行動を早く起こしてほしい。気候変動の被害者は次世代や途上国の弱者。企業と政府は大きな力を持っているが、動きは遅い。被害が深刻化しても逃げ切れる人たちが、世の中を決めている構造があると感じており、弱い立場の声を届けたい。
 遠山さん 私も遅いと感じる。就職活動中なので企業を調べると、グリーンウォッシュ(見せかけの環境対策)を感じる。認証や国際的な団体への加盟は正直、どうでもいい。どれだけ実行したのかを知りたい。

―企業にとっても若手の感性は市場ニーズであり、多様な考え方が社内に活力をもたらすと思いますが、いかがですか。
 稲野辺さん 前の職場では若手の声を聞き、反映させる風土があった。むしろ言わないと伝わらないし、自分がやりたいことをやれない。環境対策や若者との対話を“義務感”でやっている企業が少なくない。メリットだと思ってほしい。

風通しが就職先選びの基準に

遠山未来さん

遠山さん 若い人が意見を言える風通しの良さが就職先選びの基準の一つになる。会社説明会に参加すると「社会からの要請で」と枕詞(まくらことば)を付けてから活動を語る会社もある。受け身ではなく、若手の声を聞くことが“文化”として根付いた会社に入社したい。柔軟性のある会社で私も変革に挑戦したい。
 鈴木さん 今の職場で持続可能な社会を作ろうと話し合うが、そもそも「持続可能な社会」はどんな社会なのか、答えはない。みんなで意見を出し合うので、私にも意見を求められる。必要とされるのでありがたい。
企業も、できるだけ多くの視点を入れて目指す社会像を描かないといけないだろう。ただし、何が足りていないか検討した上で、なぜ若者の視点が必要なのか考えてほしい。
 西田さん 10年後、20年後も持続可能で革新的な企業であろうとすると、若いの人が能動的に参加するシステムが大切。意見を言うと不利になると恐れる若者もいる。企業側から声を上げる若者を応援すると宣言してくれると安心して意見を言える。

―話を聞き、意見を言うことが若手にとっては成長の機会であり、それが企業の成長につながると感じました。みなさんの24年の活躍を期待しています。

【座談会メンバー】
■西田吉蔵さん 日本版気候若者会議の発起人。気候変動問題を報道するメディアを応援する「Media is Hope」の共同代表。
■稲野辺海さん NPOやスタートアップを支援するエシカルプロデューサー。広告代理店を経て23年6月に独立。(web参加)
■遠山未来さん 大学3年生。持続可能な社会に向けたジャパンユースプラットフォーム(JYPS)政策提言部で環境分野を担当。(web参加)
■鈴木良壽さん 教員を6年間務め、NPOの活動支援や行政、市民のネットワーク形成を担うNPO職員。

日刊工業新聞 2024年01月05日
松木喬
松木喬 Matsuki Takashi 編集局第二産業部 編集委員
若者の意見を聞き、企業への期待が大きいと感じました。また、企業の行動を「ポーズ」と見ているという声も聞き、自分自身も反省しました。ついつい枕詞や「前置き」をしてしまいます。悪気はないですが、自分の意思で行動していると伝わるコミュニケーションが大切そうです。

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