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KDDI・SB・楽天など競合は反対も…「NTT法廃止目指す」提言、自民党が描く道筋

KDDI・SB・楽天など競合は反対も…「NTT法廃止目指す」提言、自民党が描く道筋

提言をまとめた自民党PTの甘利明座長(中央)、萩生田光一政調会長(左)ら

自民党のプロジェクトチーム(PT)が2025年をめどにNTT法の廃止を目指す提言をまとめた。総務省での協議を経て、24年の通常国会から研究成果の開示義務など時代にそぐわない要項を撤廃。電気通信事業法などの改正に着手する。だが、KDDIなどの競合事業者は規制が緩んでNTTの市場支配力が増すことを警戒し、オープンな場で慎重な議論を続けるよう強く訴える。NTT法廃止の意義を国民が納得する形で示すことが求められる。(編集委員・水嶋真人)

電気通信事業法など改正に着手

「(電気通信事業法などへの)引っ越しが済んだ時点で“空いている建屋”(NTT法)を畳むことを法律で最初から明示する」―。自民党PTの甘利明座長は、NTT法廃止に向けた道筋をこう例える。NTT法廃止ありきでではなく、必要な措置を取った上で“建屋”を畳むことを強調した。

まず、NTT法でNTTに課している研究成果の開示義務は24年の通常国会での撤廃を目指す。海外企業との研究開発の障害となり、開示の有無はそもそも経営判断に委ねられると判断したからだ。

ユニバーサル(全国一律)サービス責務は25年の通常国会での撤廃を目指す。アナログ固定電話を同責務の対象とする意義は薄れており、携帯電話や衛星通信など対象の手段を増やすことを提案。ユニバーサルサービス提供事業者もNTTだけでなく、KDDIやソフトバンクも加えるよう電気通信事業法を改正するべきだとした。

NTT法廃止でラストリゾート(最後の手段)を担う企業がなくなり、通信の空白地域ができてしまうとの懸念には「仮に手を挙げる事業者がいなくても国が空白地域を担う事業者を指定する仕組みにする」(PT事務局)法改正で対処する。

これらの責務の撤廃もあり、政府が3分の1以上のNTT株を保有する義務も撤廃するべきだとしたが、「売却の是非は政策的な判断に委ねるのが妥当」(同)とした。

外資が保有できるNTT株の総量を3分の1未満に規制する外資規制は総量規制を撤廃し、外為法などで個別審査を補強するべきだとの基本方針を示した。情報通信産業だけでなく、特に国民生活に与える影響が大きい基幹インフラ事業者に限って外為法上の投資審査を補強するよう政府に求める。

外国人がNTT役員になれない規制も撤廃するべきだとしたが、経済安全保障上の観点などからNTT法の廃止後も当分の間、登用の要件など適切な措置を講じることを検討する。NTT取締役などの選任に総務相の認可が必要な要件も25年の通常国会での撤廃を目指す。

NTT法の廃止でNTT東日本、NTT西日本とNTTドコモが合併しかねないとする競合事業者の懸念には「法的な担保として電気通信事業法でこれらの合併を禁止する措置をとることを検討するべきだ」(同)とした。NTTが日本電信電話公社(電電公社)から承継した、国民負担で建設した通信局舎などの“特別な資産”の所有のあり方については早急に検討して結論を出すよう政府に求める。

NTT、外資規制見直し要求 経済安保考慮

「NTTだけに外資規制を課すことは無意味だ」―。NTTの島田明社長はNTT法が時代に合わなくなった事例をこう表現する。

NTT法が制定された1984年当時、国内の電気通信はNTTの固定電話が独占していた。だが、現在のNTT東西の固定電話契約数は約1350万と携帯通信の約2億1000万契約の10分の1にも満たない。その携帯通信のシェアも6月末時点でNTTドコモは35・5%。KDDIは27%、ソフトバンクは20・7%に達しており、すでに一強ではなくなった。

島田社長
澤田会長

携帯通信事業者がNTT東西の電柱や光ファイバーを利用する例もあるが、携帯通信の顧客情報の管理システムやコアネットワークは基本的に各携帯事業者が自ら保有・管理している。島田社長は「経済安全保障の観点から外為法などで(KDDIなど)主要事業者も対象とすることを検討するべきだ」と話す。

澤田純NTT会長も「経済安全保障を考えるのならば(自ら電気通信回線設備を持つ企業を認可する)電気通信事業法の第一種と(それ以外の)第二種関係なく外資規制を通信にかけなければならない」と指摘する。

NTT法には政府がNTT株を3分の1以上保有し、外資を3分の1未満にする規定がある。国内の電気通信事業をほぼ独占していたNTT発足当初は当然の規定だったが、現在主流の通信手段となった携帯通信には第二種の企業を含め、複数の競合事業者がいる。

澤田会長は「NTT法維持ありきの議論でNTTの外資規制だけに焦点を当てるのではなく、世界が変わった中で他社を含めて国内全体の通信設備を守るにはどうするべきかという本質的な議論が必要だ」と要望。NTT法廃止の議論が国内通信産業全体の発展に寄与することを期待する。

競合、再び反対 オープンに議論を

共同会見に臨みNTT法廃止反対を訴えるKDDIの高橋社長(左から2人目)ら

KDDIやソフトバンク、楽天モバイルなどの電気通信事業者や自治体など181者はNTT法の廃止に反対する意見をあらためて表明した。高橋誠KDDI社長は「NTT法廃止は通信事業者間のつばぜり合いでは決してない。これからの時代、すべてが通信につながり、国民サービスにも直結する。国民にいかに関心を持ってもらうかで議論の流れが変わる」と力説する。

ソフトバンクの宮川潤一社長も「NTT以外の通信会社すべてが反対しているのに、なぜ(NTT法廃止を)押し切るのか。ここが論点だ」と指摘。「政治の力で(廃止が)決着し、これにおかしいと有識者や我々が感じたら裁判になるでしょうね」と述べた。

高橋社長、宮川社長らは、電電公社が民営化してNTTとなった85年以降、公正競争を機能させるNTTの分離・分割議論の継続が通信料金の低廉化やサービスの多様化につながったとする。だが、これに逆行し総務省の審議会を経ないままNTTがNTTドコモを完全子会社化したことに競合事業者が不信感を募らせた経緯がある。

高橋社長は「開発成果の開示義務はNTT法の改正で済む。それ以上のNTT法廃止を現在議論する意味が分からない」とした上で「(外為法強化など)さまざまな担保措置以外にも(NTT法を廃止する)大いなる目的があると推測せざるを得ない」と話す。

NTT法廃止で生まれた規制の穴をNTTが突いて国内通信市場の支配力を高めれば競合各社の投資意欲が薄れ、通信料金の高騰やサービス多様化の停滞を招きかねない。高橋社長らは短文投稿サイト「X(旧ツイッター)」への投稿などを通じて国民世論を喚起し、オープンな場での議論継続を目指す。

日刊工業新聞 2023年12月06日

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足かせ外し再び世界一へ-NTT法改正議論
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1985年の日本電信電話公社の民営化を受けて制定したNTT法を見直す議論が進んでいる。通信手段の主流が固定電話の時代に作られたNTT法には時代遅れとなった規制がある一方、電柱や通信局舎など国民負担で作られた特別な資産を公平に扱う義務が不可欠だ。国内通信業界の今後を左右する議論の核心に迫る。

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