スマートシティー実現へ…旭化成・豊田自動織機・アマナなどが生み出す技術・ソリューション
再生可能エネルギーや情報通信技術(ICT)などの次世代技術を活用し、都市インフラの充実や居住者の利便性を向上させるスマートシティー(次世代環境都市)。その実現に向け、企業が関連する技術やソリューションを生み出し、未来の都市像を提案している。愛知県国際展示場(アイチスカイエキスポ、愛知県常滑市)で開かれたスマートシティーに関する展示会「スマートシティ・パーク・フロム・アクシア・エキスポ」を通して、新たな街づくりの動きを追った。(名古屋・永原尚大)
スマートシティーでは未来のエネルギー源として期待される水素をいかに活用するかが注目点のひとつ。その中核となる水素製造において、二酸化炭素(CO2)を出さずに「グリーン水素」を製造する大型アルカリ水電解システムの開発を進めているのが旭化成だ。
今回の展示会では「全ての部材を自社生産できる」(環境ソリューション事業本部)強みを訴求する一方、「作った水素を活用するにはパートナーが必要だ」(同)として協業相手を求めていた。
水素の活用法の一例を提示したのは豊田自動織機。ブースでは自社の燃料電池(FC)フォークリフトを、トヨタ自動車が開発中の水素貯蔵モジュールと鈴木商館(東京都板橋区)の水素充填設備とともに展示した。FCフォークリフトの導入での課題は、倉庫や工場における水素インフラの整備。豊田自動織機FC推販室の担当者は「水素ステーションにある安価な水素を貯蔵して充填できるようになれば、導入コストは安価となりハードルが低くなる」と解説する。水素製造装置や水素をエネルギー源にした製品の開発が着々と進む中、供給体制をいかに構築するかが今後の焦点となりそうだ。
ICTの高度化を街の利便性につなげることにも関心が集まる。解の一つになりそうなのが、NTTアーバンソリューションズ(東京都千代田区)が2022年に名古屋市東区に完成させた「アーバンネット名古屋ネクスタビル」。顔認証を使って最適なエレベーターを案内したり、自律移動する警備ロボットを活用したりする次世代型のオフィスビルだ。展示会でも紹介し、スマートシティーにおけるオフィスの姿を提示した。
ICTを駆使した仮想空間を活用する動きも広がりそうだ。アマナは撮影している人物を仮想空間上に組み合わせて表示するバーチャルスタジオを展示した。「撮影するカメラはスマートフォンでも対応できる」(担当者)として新製品の発表会や学校教育などで活用を狙う。
未来の街づくりでは、持続可能性を高める技術も重要だ。
間伐材由来の植物繊維と樹脂を組み合わせた材料「タブウッド」での自動車作りを模索するトヨタ車体は、タブウッドを内外装に使った超小型電気自動車(EV)の展示が来場者の人気を集めた。材料開発室の担当者は「CO2の排出削減に加え、植物由来の独特な風合いも特徴だ」とアピールした。
ある出展者は「スマートシティーは一社単独では難しい領域だ。手を組んでいく必要がある」と語る。各社が多様な技術を持ち寄り、共創をしていく先にスマートシティーの姿が見えてくる。
【関連記事】 大手化学メーカー、構造改革の行方