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トイレ紙など値上げ機運、家庭紙大手3社を追い込む物流2024年問題のコスト増

トイレ紙など値上げ機運、家庭紙大手3社を追い込む物流2024年問題のコスト増

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大手家庭紙3社が、トイレットペーパーやペーパータオルなどの値上げの適否を検討している。値上げとなれば、静岡県富士市の中堅メーカー2社が11月から15―20%以上上げる動きを追う形だ。原燃料の高止まりや為替の円安傾向に加えて、物流2024年問題への対応では今後のコスト上昇が避けられないため総合的に判断する。ただ家庭紙は生活必需品で値上げ浸透が印刷用紙より難しく、市況動向や値上げによる需要減も見込まれ慎重さが必要となる。(編集委員・山中久仁昭)

家庭紙大手3社 22年以降の値上げ

古紙を使うトイレットペーパーでは11月から、中堅の丸富製紙が出荷価格を15%以上、特種東海エコロジーが同20%以上値上げする。さらに、値上げが適当か検討しているのは大王製紙日本製紙クレシア(東京都千代田区)、王子ネピア(同中央区)の3社。各社は2022年以降、2回値上げしてきた。

大王製紙は「適正価格維持を進めており、大きな環境変化には適時対応する」方針。過去の値上げによる人々の“生活防衛”意識の高まりに同社は「ソフトパックティッシュなど魅力ある付加価値品で寄与する」。日本製紙クレシアは「容積率を高め投入した新型ボックスティッシュなどで差別化する」構え。

王子ネピアは諸コストを総合的に勘案し値上げを検討中だが、物流改革への対応がポイントだとして「足元と予想される物流コストの上昇幅は自助努力で吸収できないレベルとなるため、いずれ製品価格への転嫁が必要になるだろう」とみる。

物流問題の行方は社会共通の課題。家庭紙業界では「物流名目なら消費者の理解、価格浸透は比較的進みやすい」との声がある。それでも業界内では「生活必需品ゆえ大きな需要減退は見込んでいないが、値上げ前の仮需や一定期間の買い控えが生じるのでは」との腹づもりも聞かれる。


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日刊工業新聞 2023年10月17日

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