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亜鉛から黄色い色素!「常識」覆した東大の発明

亜鉛から黄色い色素!「常識」覆した東大の発明

亜鉛錯体の粉末と分子構造

東京大学の和田啓幹助教と砂田祐輔教授らは、亜鉛で黄色い色素を作ることに成功した。亜鉛錯体は可視光を吸収しないため無色になるという常識があった。二つの亜鉛原子を近づけると電子軌道が変化して可視光を吸収するようになる。亜鉛は安価な元素。光触媒や発光材料への応用を目指す。

ケイ素で錯体の骨格を作り、二つの亜鉛原子を2・9オングストローム(オングストロームは100億分の1メートル)まで近づける。ケイ素の6員環で二つの亜鉛を挟み、6員環の歪みを利用して亜鉛同士を接近させた。

すると黄色い粉末が得られた。この電子軌道を計算すると、亜鉛同士の電子軌道が混ざり合い、最低空軌道のエネルギー準位が下がっていた。可視光を吸収しやすくなり、色が付いた。

亜鉛はその電子軌道から教科書で無色と説明される元素。二つの原子を近づけるというシンプルな発想によって、常識を覆したことになる。

光の吸収や発光を利用した機能性材料の開発につなげる。

日刊工業新聞 2023年10月13日

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