日亜化学が124億円投資、車載電池正極材の出荷2.5倍に
日亜化学工業は、辰巳工場でリチウムイオン二次電池(LiB)用正極材料の供給体制を強化する。約124億円を投じて高容量の車載LiBに使われるハイニッケル系正極材料などの生産設備を増強するほか、生産効率化や技術開発基盤を整える。その他にも設備投資を行い、2027年に正極材料の出荷数量を22年比2・5倍に高める計画。工場新棟の建設も検討し、蓄電池市場の拡大に伴う部材需要を取り込む。
日亜化学は住友金属鉱山と並ぶ、LiB用正極材料の国内主要サプライヤー。車載用中心の三元系やニッケル系に加え、民生用のコバルト系、定置用のオリビン系とLiBの特性に沿った複数の正極材料を国内製造する。近年は電動化の進行で車載LiBの需要が急拡大し、部材供給網の重要性が増している。
高容量の車載向けを中心に工場の生産基盤を強化し、正極材料の供給安定化に貢献する。投資の一部に経済安全保障推進法に基づく国の助成を活用する。
日亜化学は発光ダイオード(LED)や半導体レーザーなどの光半導体大手。正極材料は90年代から手がけるが、車の電動化などで需要が急拡大し、光半導体と並ぶ事業の柱に成長した。23年1―6月期の連結売上高は前年同期比6%増の2382億円で、正極材料事業は同25%増の1028億円だった。
一方、同事業の営業利益は同88%減の18億円に減少した。ニッケルやコバルトなど原料の市況変動や製品の価格競争が激しく、事業を拡大する中でコスト対応力が求められる。
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日刊工業新聞 2023年10月04日