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生産性30%高める、鹿島が建築現場スマート化で成果を上げている

生産性30%高める、鹿島が建築現場スマート化で成果を上げている

トータルステーションの制御により、全自動で墨出し作業を行える

鹿島が建築現場で掲げるコンセプト「スマート生産ビジョン」が、着々と成果を上げている。工事の生産プロセスを“進化”させるもので、施工ロボットの導入や管理の遠隔化、さらに建築の3次元モデリング技術「BIM」の活用を推進。これにより生産性と施工品質を引き上げ、作業・管理の両面で30%の生産性向上につなげる計画だ。働き方改革の実現も視野に入れる。

鹿島はこのほど、墨出し作業を全自動・高精度で行うロボットを開発、生産性を約2倍に向上する効果を確認した。施工図面のデータを読み込んだ上で、工事に必要な基準墨や仕上げ墨をコンクリート床にプリントする。専用の装置やアプリケーションは不要で、スタート後は全自動での作業が可能という。鹿島だけでなく、他社の現場にも積極的に展開する方針を示す。

完成した墨出しロボット「ロボプリン」は施工図面のデータを使い、基準点に設置した一般的な自動追尾型トータルステーションで制御する仕組みだ。全方位でのスムーズな移動を可能にするため、本体にはオムニホイールを搭載。プラスマイナス約1ミリメートル以内という高い精度で連続線を引くことや、10ミリメートルサイズの文字や矩形線(くけいせん)などをプリントできる機能を持たせた。

鹿島は2018年にスマート生産ビジョンを公表。これを実践するモデル現場として、まず18の技術を18―19年に施工した「名古屋伏見Kスクエア」(名古屋市中区)で活用。その後も19―21年に15技術を「横濱ゲートタワー」(横浜市西区)に、21―23年には19技術を「大宮桜木町1丁目計画」(さいたま市大宮区)に導入し、効果検証と新たな現場運営を模索してきた。

5月に竣工した大宮の現場で導入された新技術の一つが、システム天井を施工するロボットだ。ロボットアームで天井パネルを運び、決められた場所に組み込む。同ビジョンが目標に掲げる「作業の半分はロボットと」に沿い、移動式の足場を組んで8人で手がけていた作業を4人で完結できるようにした。高所作業や無理な姿勢での作業も軽減できる。

鉄骨の梁に耐火被覆材を吹き付けるロボットも、同ビジョンがもたらした成果だ。梁の形状を認識するセンサーを搭載し、形状を事前入力する従来ロボットの手間を省いた。粉じんが発生する作業をロボットに任せることで、作業環境を改善できる。この現場ではエレベーターと連携した搬送ロボットや作業員に追随する運搬ロボットなども投入し、効果を引き出している。

鹿島は同ビジョンの実現により、深刻な担い手不足の解消を目指す。自動化できる作業はロボットなどで補完・代替し、人手が不可欠な工程に作業員を配置する考えだ。また時間外労働の上限規制適用を前に、働き方改革も加速させる。単純作業や負担の多い作業を自動化し、その時間を作業員の職能や経験の拡充に充てることで、現場事務所の業務効率化を見込んでいる。

日刊工業新聞 2023年09月28日

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