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ビヨンド5G標準化へ国際連携強化、情通機構理事長の展望

情報通信研究機構の徳田英幸理事長は中長期計画の折り返し地点を迎えた。戦略4領域として重点投資してきた量子暗号通信や人工知能(AI)などの成果は上々だ。第5世代通信(5G)の次の世代であるビヨンド5Gでは国際連携を強化する。組織としては資金配分機関としての機能を強化中だ。人材確保に腐心する。

―管理人材は足りていますか。  「研究開発のマネジメント人材を増やしている。従来の研究支援人材ではなく、プロジェクトを公募して審査し、会計を確認する人材だ。大学のリサーチアドミニストレーター(URA)とも違い、人材の母集団が少ない。資金配分機関(FA)の会合で課題として挙がるのが若手の確保だ。業界として対応していく必要がある。当機構が研究と資金配分の両方の役割を備えていることは強みになる。ビヨンド5Gで国際共同プロジェクトを立ち上げる。総務省とドイツ連邦教育研究省が連携を強化した。我々は国際共同研究を公募する計画だ。大学や産業界にも手を挙げてほしい。ビヨンド5Gは一つの国で作り上げることは不可能だ。連携して国際標準化を進めていく」

―戦略研究の状況はいかがでしょうか。  「量子暗号通信は2010年にテストベッド(検証環境)を構築し世界で最も長い運用実績がある。すでに東芝が事業化し、社会実装が進んでいる。研究としては暗号鍵の生成速度など、技術が実用レベルにあることを示し、医療や金融分野でサービスを含めた実証ができている。次は量子セキュリティー技術と次世代コンピューティング基盤を融合させる。量子セキュアクラウドとして提供する」

―政府は生成系AIをテコ入れします。  「先進7カ国(G7)デジタル・技術大臣会合で我々の翻訳AIを利用してもらった。AIは幅広い職種の生産性向上につながる。日本が保有していた方が良い技術だ。国内には優秀な研究者がいる。彼らが腕を振るえる環境は必要だ。我々のAI研究もこうした流れに適合させていく」

―研究者の採用に女性枠を設けました。  「遅いと叱られるかもしれないが、内部で議論してきてようやく実現した。先に女性枠採用を始めた大学では有期雇用から無期雇用に切り替えるところでつまずいており、いまだ過渡期にある。我々も社会へメッセージを発し、こうした状況を変えていきたい」

情報通信研究機構理事長・徳田英幸氏
日刊工業新聞 2023年06月07日
小寺貴之
小寺貴之 Kodera Takayuki 編集局科学技術部 記者
ビヨンド5Gや量子暗号通信などのテストベッド整備に資金配分機能が加わり、研究環境と資金を提供する組織になった。日本国内での求心力は一定のものがある。これを国際共同研究をテコに世界へ広げられるかが焦点だ。世界情勢から同志国の団結は強化されている。ビヨンド5Gの標準化競争で真価が問われることになる。

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