東北大と三井住友信託がTHCI事業構想、大学にとって信託銀行が注目の連携相手と言える理由
東北大学と三井住友信託銀行は8日、国立大学と金融機関による国内初の出資会社「東北大学共創イニシアティブ」(THCI)の設立発表会を開き、事業構想を説明した。THCIが案件ごとに大学の研究者と施設、開発支援の企業、コンサルティングなどが加わる共創プラットフォーム(基盤)を構築。三井住友信託銀行の投資を呼び水に、地方銀行やベンチャーキャピタル、コーポレートベンチャーキャピタルから資金を集め、社会実装するビジネス開発を行う。
THCIは国立大学法人法の改正により可能となった、実用化に向けた共同研究や教育研究施設の利用を後押しする出資会社で、4月に設立。大学の知を活用して経済価値を生み出す事業創造プロデューサーという位置付けだ。
従来の共同研究の枠を越え、産学官金のネットワークで社会実装につなげる。企業が新技術を本業以外で事業化したり、自社商品の科学的裏付けを求めたり、デジタル技術や新事業創出の人材育成を手がけたりする際に同社が多様な機関をつないで支援する。
三井住友トラスト・ホールディングスの高倉透社長は「信託銀行は透明性が高く健全な資産管理・運用で蓄積がある。半導体やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)などで相当な資金が必要になる今、世界中の投資家を含め多様な機関と築いてきた長期的な関係を生かしたい」と説明した。
東北大の大野英男総長は「目指している国際卓越研究大学においても、新会社は大きな役割を果たす」と強調。THCIの石川健社長は「大学が得意とする製造業との共創だけでなく、社会課題解決のサービス業に広げて事業を創造したい」と語った。
日刊工業新聞 2023年08月09日