ZOZO NEXT、東大、西陣織の老舗が挑戦する「スマートテキスタイル」の目指す場所
温度によって黒から鮮やかな青に色を変える織物、スピーカーのように音を発する布、透過する光の色を変える布―先端技術と伝統的な織り方や模様、考え方が融合した「スマートテキスタイル」8点が、東京丸の内で体験できる。
ZOZOの研究開発を担うZOZO NEXT(千葉市)と、東京大学大学院情報学環の筧康明研究室、西陣織の老舗である細尾(京都市中京区)の共同研究プロジェクトは、作品展示イベント「Ambient Weaving Collection --環境と織物」を開催している。三菱地所の運営する「Have a Nice TOKYO!」(千代田区丸の内)にて、入場料は無料。会期は1日から7日までの7日間だ。
同プロジェクトは2020年に開始。これまで米テキサス州で開かれた「サウス・バイ・サウスウエスト(SXSW)2022」や、欧州、京都などで作品を展示してきた。今回はこれまで展示してきた2点に加え、プロトタイプ6点を初出展した。
初出展作品のうち「開発、制作に最も時間がかかった」とZOZO NEXT MATRIX本部IoT/Textile部の中丸啓部長が話すのが、「WP001 <Sounds>」。手間をかけて織り込まれた緯(よこ)糸部分がオーディオの電気信号により音を発生させる。場所によって異なる音を発することも可能。自在に形を変えられ、空間に応じた音の変化を体験できる。また、織物そのものの特徴として音を透過させるので、周囲の音を生かしながら音を流すといった演出もできる。
一方で、従来の量産技術を応用できる作品が、「WP002 <Optical Unveil>」という織物。一見すると黒や暗褐色で模様が織り込まれているが、光の当たる向きと見る角度によりオーロラのような色合いが浮かぶ。「車のライトが当たると光が反射する反射板のような原理」(中丸部長)を応用しているという。
これらの他にも、2枚の織物が重なったときだけ色が浮かぶ作品や、有機ELダイオード 箔を織り込み発光させることのできる作品などが揃う。長い歴史の中で「静」の作品として完成された西陣織を、先端技術によりアップデートし動きを与え、新しい気づきと提案を投げかける。
ZOZO NEXTがスマートテキスタイルの開発に力を入れる理由は、次世代のファッション提案につなげるためだという。「ファッションがインテリアやモビリティとの相関性を持ったり、デジタル領域へ拡大していく流れにある。素材の面でも新たな開発をしていかなければ裾野が広がらない」(中丸部長)。
ファッションECを運営するZOZOは多くのブランドとの接点があることから、新技術や新素材提案のハブになるための取り組みを引き続き進める。