「耳石」測定でクロマグロの産卵地が明らかに
海洋研究開発機構と東京大学は、日本沿岸や太平洋の熱帯・温帯海域に分布する「クロマグロ」が産卵する領域が日本海南西部と南西諸島沖であることを明らかにした。平衡感覚や聴覚を制御し、生まれた時の海水温が記録されている「耳石」に注目。50検体の酸素同位体比を調べたところ、45%が日本海南西部、55%が南西諸島沖で生まれたことが分かった。クロマグロの生態を解明するカギになると期待される。
耳石は木の年輪のような成長輪を形成し、その中心を調べると生まれた時の海水温が分かる。耳石の酸素同位体比と海水温には相関関係があり、成長輪ごとの酸素同位体比が分かれば年齢ごとにどこにいたかを知ることができる。
微小領域の元素・同位体比分析ができる「二次イオン質量分析計」を使って耳石の成長輪を測定した。耳石は約1センチメートル。半分に切断して成長輪をむき出しにし、樹脂で固めて測定試料とした。
クロマグロは春から夏に産卵・ふ化する。生まれてからその年の冬までの期間の成長輪について、酸素同位体比を測定。成長輪の距離と合わせて解析すると、日本海南西部と南西諸島沖が産卵地であることを特定できた。
クロマグロは日本での消費量が世界一だが資源の減少で漁獲制限が進んでおり、国際自然保護連合(IUCN)は絶滅危惧種に指定した。クロマグロが存在する水域には水深が浅く温暖化の影響を受けやすい場所があり、将来的に資源が枯渇する可能性がある。そのため産卵環境を知る必要があるが、これまで解明されていなかった。
日刊工業新聞 2023年月8月1日