海洋機構が水中災害遺跡「桧原宿跡」の特徴解明
海洋研究開発機構の谷川亘主任研究員らは、1888年に発生した福島県・磐梯山の噴火で湖中に沈んだ集落の水中災害遺跡「桧原宿跡」の特徴を明らかにした。湖中の集落が存在していた場所付近を掘削し、試料を非破壊分析や化学分析で調査。道路や住宅地だった場所は粗く均質またはバラつきが大きい粒子だが、畑があった場所は人工物が見つかるといった違いを見いだした。噴火前から湖が形成するまでの環境変動の解明につながる。
高知大学や京都大学、神戸大学、帝京大学などとの共同研究。水中遺跡の中でも災害に着目した研究は日本で初めてだという。
桧原宿跡は磐梯山の噴火と山体崩壊によるせき止め湖である桧原湖の形成で被災・水没した宿場町跡。現在も残っている山神社につながる参道に沿って二つの鳥居があり、そのうち一つは湖中に沈んでいる。
沈んだ鳥居から湖の中心に向けて30メートル、50メートル、70メートル、100メートル地点の4カ所を掘削した。得られた試料をX線―コンピューター断層撮影(CT)画像撮影や非破壊物性測定、密度・間隙(かんげき)率を調べるXRD粒度分析などを実施し、噴火前後の地中の違いを調べた。
30メートル地点と50メートル地点では空隙率が80%で、バラつきが小さい細粒が多く珪藻が含まれていたことから湖が形成した後にできたことが分かった。70メートル地点と100メートル地点を調べると、浅部は珪藻(けいそう)や火山ガラスが含まれていたため噴火後の堆積物と推定された。深部は空隙率が40―70%で均質またはバラつきが大きい粗粒で、100メートル地点では人工物も見られたことから噴火前の桧原宿由来の堆積物と考えられる。桧原宿の地図を見ると70メートル地点は道路や住宅地で、100メートル地点は畑などがあった。道路や住宅地と畑では地盤の違いがあることを見いだした。
湖中の桧原宿跡は比較的新しく、災害の発生前後の記録や被害状況が分かっている珍しい遺跡。保存状況が良く湖の水深が浅い。だが詳細な調査はされていなかった。