鉄基合金・チタン基合金に適用可…阪大がシミュレーション技術開発、3Dプリンターで単結晶・多結晶を作り分け
大阪大学の中野貴由教授、石本卓也特任教授らの研究グループは、金属3次元(3D)プリンターで単結晶様の組織と多結晶組織を任意に作り分けるためのシミュレーション技術を開発した。コンピューター上で造形条件や凝固条件など設計指針を得て、実際に両組織の特性を併せ持った金属の造形に成功。ステンレスを含む鉄基合金やチタン基合金、ニッケル基合金など各種合金に適用可能だとしており、5年後の実用化を目指す。
レーザー粉末床溶融結合(LPBF)方式金属積層造形(AM)技術を使い、単結晶様に結晶方位が一様にそろった異方性組織と、結晶方位がランダムに分布した等方性組織を任意に作り分けた。鋳造では温度勾配と凝固速度を緻密に制御することで作り分けが可能だが、金属3Dプリンターではレーザー照射による大きな温度勾配と凝固速度を直接測定することができず不可能だったという。
研究グループでは温度場シミュレーションによって凝固条件の高精度な予測を可能とした。造形条件を緻密に設計でき、同じ造形物の中に異方性組織と等方性組織を獲得することに成功した。
一度のプロセスで造形が可能となるため、強度や延性、弾性などの特性ごとに別々に製造する必要がなくなる。幅広い産業分野において、波及効果が期待できるとしている。
例えば、発電や航空機エンジン向けのタービン翼では、遠心力を受けるブレード部は高温クリープ強度が優れる異方性単結晶様組織、シャフトと連結されるダブテール部では、一定の強度と靱性を発揮する等方性多結晶組織がそれぞれ求められる。
同研究は科学技術振興機構(JST)の戦略的創造研究推進事業(CREST)の支援を受けて実施した。
日刊工業新聞 2023年07月13日