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JIP陣営のTOB成立・非公開化が焦点の東芝、株主からは「無念」の声

JIP陣営のTOB成立・非公開化が焦点の東芝、株主からは「無念」の声

東芝

29日の定時株主総会で取締役候補者の再任案が可決された東芝。波乱はなく、現経営陣が株主の賛同を得ることにひとまず成功した。次の焦点は投資ファンドの日本産業パートナーズ(JIP)陣営によるTOB(株式公開買い付け)の成立と非公開化だが、仮にシナリオ通り進んだとしても、これから問われるのは説得力のある東芝の中長期の成長戦略の策定と遂行だ。

「技術はあるのに残念だ」。株主総会の出席者からはTOB実施に対する無念の声が多く聞かれた。2015年に発覚した不適切会計に端を発した東芝の経営の混乱。TOBの実施と非公開化は、全体の2―3割を持つとされる「もの言う株主」を排除することで、株主をJIP陣営に集約し、より中長期的な視点から東芝の再成長を促すことが狙いだ。

島田太郎社長兼最高経営責任者(CEO)は、「非公開化の結果、安定的な株主基盤の下で一貫した事業戦略を実行して、さらなるトランスフォーメーション(変革)を実現できる」と株主に対して説明した。

TOBは7月下旬にも実施される。成立には66・7%の株主の応募が必要となり、「もの言う株主」が応じるかどうかが最大の焦点だ。株主総会に出席した株主からは「(TOB価格が)1株4620円では安過ぎる」との意見もあがっており、TOB成立は予断を許さない。

ただTOBが成功して非上場化されても、成長路線へと復帰できるかは不透明だ。島田社長は「技術のダイバーシティー(多様性)」という表現で、総合電機としての東芝が持つ技術力の強みと可能性を強調する。その上で、デジタル化とデータの利活用、プラットフォーム(基盤)ビジネスの推進により、これらの技術を有機的に結合するなどして、収益を改善することを考えている。


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日刊工業新聞 2023年06月30日

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