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ここだけでしか分からない歯車産業

生産動向、需要先、構造、求められる性能まで
ここだけでしか分からない歯車産業

1890年にトヨタグループの祖、豊田佐吉が自動織機の試作用に作った木製の歯車(トヨタ産業技術記念館所蔵)


求められる性質は


 歯車に求められる性質としてまず、高精度が挙げられる。精度が悪く正確にかみ合わなければ、燃費が下がり騒音が発生する。高効率を達成するために伝達損失を減少することは、今後も主要な課題であり続ける。低コストで高精度な歯車生産を目指して、加工機の開発も重ねられている。

 また耐久性も高品質な歯車の必須条件の一つだ。機械が小型化・高出力化するのにあわせ、高い負荷に耐えうる高強度の歯車が求められている。歯車には硬くて粘り強い鋼が必要とされるため、相反するこれらの性質を得るために熱処理を行う。

 さらに表面は、各部分で異なる性質を持たせるためにさまざまな表面処理加工を行う。表面だけを硬化させる浸炭や、耐摩耗性を高める窒化などさまざまな方法があり、現在も盛んに研究が行われている。

小型・軽量化が重要なポイント


 小型・軽量化も重要なポイント。小型歯車には金属のほか樹脂を材料としたものも普及しており、低騒音性にも優れることから、今後ますます広がっていくことが予想される。炭素繊維強化プラスチック(CFRP)をはじめとした最先端の材料の使用についても、研究が進んでいる。

 長い歴史のなかで、常に産業の発展とともにあった歯車。その可能性はつきることなく、今後も多くの人々によって開発・研究され、進化し続けるだろう。

基礎から応用まで技術習得「JGMAギヤカレッジ」


 日々進歩を続ける歯車産業界は、業界をけん引する優秀な人材を必要としており、人材育成事業に熱心に取り組んでいる。JGMAは毎年、歯車技術の理解と習得を目的とした「JGMAギヤカレッジ」を開講している。社会人技術者を対象とし、9カ月間にわたり全国各地で開催する。講師陣には、歯車研究界トップクラスの大学教授や企業の技術者などが名を連ねている。

 11年度に「マスターコース」(基礎コース)を開講、さらに12年度からは「プロフェッショナルコース」(応用コース)も開講しており、現在までに480人の卒業生を輩出している。基礎講座では基礎、設計、製造をしっかりと学び、現場実習も体験できる。応用講座では性能評価やトラブルシューティングも取り上げ、より広範で実践的な技術を身に付けることができる。

 また経営者の育成にも力を入れており、メーカー視察や講習会などの研修も行っている。歯車産業界の先を見据え、業界全体で次世代の成長を促していく姿勢だ。
明豊
明豊 Ake Yutaka 取締役デジタルメディア事業担当
機会があれば炭素繊維強化プラスチックなど次世代の研究などについても詳しく取り上げることができれば。

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