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ローカル線存続は…「地域の足」再構築へすぐに検討すべき課題

国土交通省は存続が厳しくなっている地域公共交通について国が積極的に関与する方針「地域公共交通の『リ・デザイン』に向けた最終とりまとめ案」を月内に公表する。4月の法律改正で自治体や事業者から要請があれば国がローカル鉄道の再構築協議会を設けることとされた。国交省の交通政策審議会地域公共交通部会は、こうした制度や予算を有効に機能させるための具体的な取り組み方針や交通不便地域の解消などを議論し、2月に中間とりまとめを出した。さらに課題を追加し最終とりまとめを行う。(編集委員・板崎英士)

地域の公共交通を取り巻く環境は少子高齢化や過疎化に加えコロナ禍でますます厳しくなっている。鉄道1キロメートル当たり1日に輸送した平均人数を示す輸送密度が4000人未満の路線は、JR発足の1987年度に36%だったが2019年度には41%に、コロナ禍の20年度には57%に増えた。4000人未満とはバス転換や第三セクターへの移管を検討するレベルだ。鉄軌道全体で00年度から22年度までの22年間で1158キロメートルの路線が廃止されている。

国は地域公共交通の活性化及び再生に関する法律(地域公共交通活性化法)の一部を改正する法律を4月に成立させた。再構築協議会の制度をはじめ地方自治体と交通事業者との協定範囲の拡充や、鉄道とタクシーの協議運賃制度の創設などを定めた。2月の中間取りまとめでは現状認識を踏まえ交通政策のさらなる強化、地域づくりとの連携、デジタル技術などによる高付加価値化の3本を打ち出している。

現行制度では鉄道の存続など地域公共交通のあり方は自治体が法定協議会を設置し議論する仕組みだが、十分に機能していないケースも多い。このため最終とりまとめ案では法定協議会の運営方法などのガバナンスにも踏み込み、まずは法定協議会が十分に機能するよう働きかける。その上で国の再構築協議会との両輪で進める。

また、すぐに検討すべき課題として交通不便地域におけるデマンド交通や自家用有償旅客運送の改善策を打ち出す。さらに政策立案の前提となるデータの収集・利用、公共交通をユニバーサルサービスへの位置付け、安定財源の確保などを追加する。地域公共交通に新たなプレーヤーを呼び込むには再生可能エネルギーを軸とする地域グリッドの活用などの脱炭素化も重要となる。国交省は「環境ファイナンスによる新たな企業の呼び込み」(倉石誠司総合政策局地域交通課長)なども進めたい考えだ。

23年度(22年度補正と23年度当初予算)の公共交通関連予算は、前年度実績より8割増の1284億円を確保した。自治体が事業者と協定を結び地域の公共交通を一括運行する場合の補助制度も創設する。法律、予算、制度を充実し地域の足の再構築(リ・デザイン)を後押しする。

日刊工業新聞 2023年06月08日

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