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NOK・ニッパツ・曙ブレーキ…自動車部品メーカーが収益改善策強化へ、それぞれの重点課題

自動車決算-潮目を読む #03

自動車部品メーカー各社は、コスト上昇分の価格転嫁や適正価格での取引強化、原価低減、生産合理化といった収益改善策を強化する。高まる地政学リスクや物流の混乱により原材料価格や電気・ガスなどのエネルギーコストが高止まりしている。自動車生産の本格回復を視野に、これらの取り組みの継続・浸透が課題となる。

足元では半導体不足が緩和され自動車生産に回復の兆しが現れているものの、コスト増加分の価格転嫁が遅れていることで収益を圧迫している。2023年3月期は前期比で増収減益となったNOKは、特にシール事業において「100%の価格転嫁がまだできていないことや、タイムラグ(時間差)があることなどが収益悪化につながっている」(菅谷良裕専務執行役員)と説明する。 

各社はこれらのコスト高が今後も継続するするとみる。24年3月期についてトピー工業の高橋正年常務執行役員は「エネルギー費は高止まり前提での予算としている。海上輸送費もさらに上がるリスクがある」と予想する。同社はコスト増分に見合った売価の形成に向け、引き続き価格交渉を進める。

NOKは新たに策定した23―25年度の中期経営計画で新規・成長領域の拡大とともに既存事業での「適正価格による受注の徹底」を重点事項に掲げた。コスト高に伴う価格転嫁に取り組むほか、不採算品の価格見直しや高付加価値品の強化に取り組む方針だ。

ニッパツは主力製品の懸架バネ事業について、原材料やエネルギー高騰分の価格転嫁はこれまでである程度できているが「今後は付加価値を認めてもらい、適性価格化に注力する」。また「労務費上昇を前提とした生産性改善も課題」とする。

原価低減活動で競争力を高める企業もある。スタンレー電気は原価低減に向けた戦略投資として、25年度までに220億円、30年までに450億円を投じる計画。原価は25年に19年比で半減を目指す。貝住泰昭社長は「(毎年営業利益率10%を超える)目標達成のために必要な試み」と話す。

曙ブレーキ工業は事業再生計画の下、各地域・拠点で合理化を進め赤字脱却を目指す。国内では主要工場の生産品目を再編し、専門工場化する取り組みを前倒しで完了した。今後は各工場を整流化し「寄せ止め」を実施するなど生産最適化に注力する。北米では売上規模減少に応じた間接人員の削減や生産性向上に取り組む。(編集委員・錦織承平、大原佑美子、増田晴香が担当しました)


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日刊工業新聞2023年5月25日

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