企業の人手不足、40年に1100万人…特に深刻な職種は?
少子高齢化の進展に伴う労働力人口が減少する中、労働力の需給ギャップによる人手不足が顕在化しそうだ。団塊ジュニア世代が65歳以上になる2040年には、企業などで働く人の不足が全国1100万人になるとの試算もある。特に生活を担うサービス(生活維持サービス)の人手不足が深刻だ。趣味を労働供給に活用するなど従来とは違う発想の転換が求められる。(幕井梅芳)
国立社会保障・人口問題研究所(社人研)が4月26日にまとめた将来推計人口によると、総人口は70年に現在の約70%に減少し、65歳以上の人口割合は現行の28・9%(20年)から38・4%(65年)になると試算する。このうち、15―64歳以下の人口は7406万人(20年)から4529万人(65年)へと減少する。高齢者の人口増加と労働力の減少という二つの状況が世界でも例を見ないスピードで進んでいく。
「40年には、1100万人余りの労働力が不足する」。リクルートワークス研究所は「未来予測2040」の中で、衝撃的な試算をまとめた。職種別でみていくと、ドライバーについては、30年に37万9000人、40年には99万8000人が不足するとし、40年の労働需要(413万2000人)への不足率は24・2%に達する。特に地方では、配達が全くできない地域や著しく遅配する地域が生じるという。
建設分野では、40年の労働需要(298万9000人)に対する不足率は22・0%となる。道路のメンテナンスや災害後の復旧に手が行き届かず、重大な事故の発生や崩落したままで放置せざるを得ないインフラが生じる可能性が高い。
生産工程分野での40年の労働需要(845万人)に対する不足率は13・3%。大規模な生産工場を新設する際は、労働力確保がボトルネックとなる。国内生産が中心の製品は、徐々に品不足が顕著になってくる。
最も深刻なのが、介護サービス分野だ。30年に21万人、40年に58万人が足りない。40年の労働需要(229万7000人)に対する不足率は25・3%に達する。全国的に「週4日必要なデイサービスに、スタッフ不足で3日しか通えない」という状況を予測する。
リクルートワークス研究所の古谷星斗主任研究員は「構造的な人手不足の中で、地方は一段と厳しくなる。発想の転換がないと、日本社会が直面する担い手不足は解決できない」と指摘する。本業の仕事以外で人々が普段行っている趣味や娯楽、ボランティア活動のようなさまざまな活用が労働供給に貢献している例があるという。
また、自身が出資し主体的に働ける、雇われない働き方として注目される「労働者協同組合」という新たな動きがさまざまな社会課題を解決する手段として、注目されつつある。従来の企業活動とは一線を画すこれらの活動や取り組みが労働供給の新たな波を起こす可能性を秘めている。