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開業20年の「六本木ヒルズ」、エリア競争力向上のけん引役は「自治会」

開業20年の「六本木ヒルズ」、エリア競争力向上のけん引役は「自治会」

開業20年を迎えた六本木ヒルズ。国内外から毎年4000万人が訪れ、人気が衰えない

森ビルは25日に開業20年を迎えた六本木ヒルズで、街全体を運営するタウンマネジメントに磨きをかける。地権者や居住者、テナントなど1050者で組織する自治会を核に、醸成された豊かなコミュニティーの発展を後押し。防災対策を含むハードの充実と併せ、街の鮮度を維持する。今も高く評価される六本木ヒルズの求心力を引き上げ、エリア全域の競争力を高める。

六本木ヒルズには毎年、国内外から約4000万人が訪れる。森タワーを中心とするオフィスは満床に近い水準を保っており、商業区画も2022年度に売上高で過去最高を更新するなど衰えは見られない。地権者との交渉段階から六本木ヒルズに携わってきたタウンマネジメント事業部の家田玲子特任執行役員は「この街を皆で育ててきた成果だ」と好感触を示す。

この強さを次の20年も持続させようと、森ビルがけん引役に位置付けるのが再開発組合を前身とする「六本木ヒルズ自治会」だ。足元では安全・安心な街づくりとコミュニティー形成、地域貢献を活動の軸に掲げる。新年会や震災訓練のほか、異文化交流に朝の太極拳、清掃活動など企画・運営するイベントは多彩。今夏には、4年ぶりに盆踊りの復活も検討している。

六本木ヒルズ自治会による朝の太極拳

ただ「人と人との絆を増やさなければ、街を生き生きとさせ続けるのは難しい」(家田特任執行役員)。居住者や就業者を主な対象とする交流会だけでなく、森美術館やクリスマスマーケットなどを通じた「新たな人を呼び込む仕掛けづくり」(森ビル)にも重きを置く。既存の人気イベントの運営を外部に任せ、社員が常に新しいことを検討・実装できる体制も整える。

今秋完成する「虎ノ門ヒルズ」と「麻布台ヒルズ」との連携も模索する。多様な文化や情報を創出・発信する「文化都心」として、他のヒルズや近隣の文化施設、他社物件とも連続したにぎわいの形成を志向。辻慎吾社長がかねて強調してきた「世界からヒト・モノ・カネ・情報を引き付ける“磁力”のある都市」に向け、海外との都市間競争を勝ち抜く要素として育む。

その上で、阪神・淡路大震災の発生を背景に大きく見直した防災対策も訴求する。森タワーに導入された約550基の粘性系ダンパー・鋼材系ブレースはその一つで、東日本大震災の発生当時「51階のレストランでもグラス一つ割れなかった」(同)とされる。都市ガスを使った自家発電プラントも、企業の事業継続計画(BCP)に対応する設備として強調する。

「逃げ出す街から逃げ込める街へ」との信念に基づき、ソフト面の対策も徹底する。森ビルは本社を置く六本木ヒルズの2・5キロメートル圏内に、大規模災害が発生した際に管理・運営する物件に駆けつける社員約140人が暮らす「防災要員社宅」を構える。民間企業としては異例の体制ながら「自助・共助・公助のうち、共助に携わるのは当社の使命」(同)とする。

日刊工業新聞 2023年月4月25日

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