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ゴム部品で車内静かに、豊田合成が推進するEV時代の“音マネジメント”

ゴム部品で車内静かに、豊田合成が推進するEV時代の“音マネジメント”

豊田合成のガラスランの断面。リップを従来の一つから二つに増やし遮音性を高めた(左)

豊田合成が車の電動化に対応し、ゴム部品の静粛性向上に乗り出している。内燃機関車(ICE)ではエンジンが主な音の発生源だったが、電気自動車(EV)や燃料電池車(FCV)はモーターで動くため車内では道路ノイズや風切り音が鮮明になる。低周波から高周波まで幅広い音域に対応する“音マネジメント”が不可欠になる。限られた部品サイズの中で量産性を維持しながら新ニーズを取り込むべく設計に工夫を施す。

豊田合成が手がける自動車部品の一つにウェザストリップ製品(WS)がある。ドアや窓枠などに装着し、雨風や騒音から室内を守るほか、窓ガラスの昇降などをスムーズにする機能を持つ。「水やホコリは当然防ぐが、電動化を契機に音が目立つ」と話すのはWS技術部の箕浦秀明主監だ。これまでWSはドアなどの隙間を埋めることに力を入れていたが、箕浦主監は「透過する音を少なくする」と開発方針を掲げる。

同社が電動化を背景に設計を見直した製品の一つに、車体とドアの枠をゴムで包む部品「オープニングトリム」がある。遮音性向上のため製品形状のうち中空部を増やし、高速走行でもドアと車体が空気の圧力で離れることを防ぐ。一方で中空部を大きくするとドアの閉まり性が悪化する。これは耐摩耗性に優れた表面処理を後から行う方式に変更した。

さらにガラスの昇降をスムーズにしながら振動を吸収する「ガラスラン」でも遮音性向上に取り組む。「リップ」と呼ばれる部位を従来の一つから二つに増やすことで遮音性を高めた。機能強化したガラスランでは車が時速100キロメートルで走行した場合「従来より2―3デシベルほど車内の音を下げられる」(箕浦主監)。

音に焦点を当てたWSでは、音が目では見えないことが課題。同社は可視化技術やコンピューター利用解析(CAE)などを駆使し、開発速度を上げている。実際、CAEなどを活用すると開発工数は半減した。「EV化も早く、大幅に工数を削減できることは効果的。見える化はお客さまにも説明しやすい」と箕浦主監はメリットを語る。

静粛性は車全体でのマネジメントも必要だが、会話の明瞭化という目標に向け、製品一つひとつの機能向上が物を言う。部品メーカーでも電動化に伴い付加価値を高めた製品をいち早く開発し、車メーカーに売り込むという新たな潮流が始まっている。


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日刊工業新聞 2023年04月07日

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