豊田合成・東海理化…トヨタ系部品メーカーの新規事業が成長軌道に乗り始めた!
トヨタ自動車系の部品メーカーで、非自動車分野の新規事業が軌道に乗り始めている。環境対応や食糧不足、教育といった社会課題の解決に資する事業で、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に通じる取り組みだ。収益貢献には時間が必要だが、地域や別業態との連携を拡大するきっかけになっている。社会貢献と収益化の両立を目指す各社の動きを追った。(名古屋・川口拓洋)
豊田合成はエアバッグ生地を活用した調理用エプロンを名古屋の飲食店である山本屋総本家(名古屋市中区)などと共同開発した。山本屋総本家から豊田合成への要請で実現。エアバッグの高い防水性や汚れにくい特徴を生かした。名古屋市立桜台高校(同南区)や、防水エプロンなどを製造する船橋(同中村区)が製作に協力した。
東海理化は、Gakken(東京都品川区)と共同開発した小学校低学年や特別支援学級向けのデジタル教材を発売した。振動する専用のタッチペンを併用することで、視覚や聴覚だけでなく触覚を利用し、学習の高度化につなげる。
東海理化が得意とするスイッチや車載ディスプレーを指で動かす際に操作感を与える「ハプティクス技術」を応用。まずは国語力の基礎を育成する約450のコンテンツを用意する。HMI製品開発部開発推進室の森竹好室長は「今後は算数など科目を増やす」と展望を語る。
ファインシンターは自動車部品事業で培った粉末加工技術と、熱処理技術を応用した昆虫食事業の製品を拡充する。3月中にも国産コオロギを燻製(くんせい)・粉末化した「焙煎コオロギ飴」を発売する。これまでスナック菓子やラーメンを販売済み。
販売するあめは本社を構える愛知県春日井市内での製造にこだわり、春日井市などとも連携した。ファインシンターでコオロギを焙煎・粉末化し、製造は大丸本舗(愛知県春日井市)が担当。包装は社会福祉法人まちスウィング(同)で担う。パッケージのデザインは、まちスウィングが運営する放課後デイサービス「プライマリーすてっぷ」に通う小学5年生の松井結稟さんが手がけた。
BツーB(企業間)事業を手がけてきた自動車部品メーカーの多くはこれまで受託生産に重きを置いていた。一方、車の電動化に伴い、ある部品メーカー幹部は「新たな部品やユニットなどを自動車メーカーに提案する必要がある」と変化を認識。顧客の声を聞きながらモノを形にするプロセスを学べるため、「BツーC(対消費者)向け事業が本業に良い影響を与えている」という。
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