ニュースイッチ

商船三井が80隻に拡大、高さ53mまで伸びる帆を搭載した風力利用船の推進力

商船三井が80隻に拡大、高さ53mまで伸びる帆を搭載した風力利用船の推進力

松風丸の硬翼帆は高さ53メートルまで伸びる

商船三井は風の力を船舶の推進力として利用する「硬翼帆(こうよくほ)」を搭載した「ウインドチャレンジャー」導入船を現状の1隻から2035年度までに80隻まで拡大する。1本の帆で温室効果ガス(GHG)の排出量を5―8%程度削減できると試算しており、船舶の省エネルギー航海に貢献する。50年のGHG排出量実質ゼロ(ネットゼロ)の目標達成に役立てる。

商船三井は50年のネットゼロ達成に向け、液化天然ガス(LNG)のほか、燃焼してもGHGを発生しないアンモニアを燃料とする船舶の導入・開発を急ぐ。ただ、低炭素燃料の船舶を導入しても省エネの技術の重要さは変わらず、平行して技術開発を続ける。

ウインドチャレンジャーは同社における船舶の省エネ技術の柱の一つ。コロナ禍で得た利益を元に、計画では30年度までに25隻、35年度までに80隻で導入する予定だ。

最初の船舶である「松風丸(しょうふうまる)」は、22年10月に就航した。帆は繊維強化プラスチック(FRP)製で、4段式に伸縮。高さが最大53メートルまで伸びる。自動制御で帆の回転のほか、風の強弱に応じて帆を伸縮させ、風を捕まえて推進力に変える。東北電力用の石炭輸送船として大島造船所(長崎県西海市)が建造した。豪州やインドネシア、北米などからの石炭輸送に従事する。

載貨重量10万トン級のバラ積み船ではGHGを日本―豪州航路で5%、日本―北米西岸航路で8%、同型船よりそれぞれ削減できるという。2隻目は木質ペレット輸送のバラ積み船として、同造船所が建造し、24年に竣工を見込む。

日刊工業新聞 2023年04月05日

編集部のおすすめ