切る、削る、磨く!ダイヤモンド・cBN工具の市場はどこまで広がるか
自動車向けに需要増える
ダイヤモンド工具メーカーもニーズの変化に合わせた商品戦略や新規開拓に取り組んでいる。老舗メーカーの一つ、京浜工業所(東京都品川区)では自動車向けや電子部品向けなど多様な商品をそろえる。主力の自動車関連では「シリンダーブロック、ピストンなど自動車エンジン部品は強度が高く緻密化した素材が使われるようになり、ダイヤモンドやcBN工具に求められるものも変わってきている」(内田亨副社長)。ホーニング加工用砥石などで需要が増加しているという。
また同社では液晶関連向けに超精密単結晶ダイヤモンドバイトを開発。バックライトシステムで使用されるシートの集光率を向上させるのに必須となる加工に用いられるもので、ナノレベルの制御により高精彩モニターの映像品質向上や省エネ化が可能になる。「モノづくり補助金などを生かし最新測定機器などの設備も整えており、顧客先の要望に丁寧に応えていきたい」(内田由美子社長)と強調する。
国内で初めてダイヤモンド工具メーカーとして創業した日本ダイヤモンド(横浜市都筑区)では、2012年に三菱マテリアルから事業譲渡したホイール関連の精密研削用製品の売上比率が上昇。近年では従来の主力だった土木建築や耐火物用向け工具を上回るようになっている。
2014年の日本国際工作機械見本市(JIMTOF)で発表した新メタルボンド超砥粒ホイールは、研削速度が早く高剛性な工作機械が登場するのに合わせて開発。「切れ味と長寿命を兼ね備え重研削でも安定した精度で加工できる」(正富宏明社長)ことから評価されているという。
「顧客と一緒になって推奨ダイヤモンド工具と最適な加工条件を見つける技術提案型営業を活発化させている」(同)とし、国内外での受注に積極的だ。
ダイヤモンド工具業界ではこうした付加価値の高い製品開発と積極的な販路開拓により、新たなダイヤモンド工具市場を切り開いている。
工具メーカーが加盟する団体のダイヤモンド工業協会でも「化学物質規制などきめ細かな情報を収集しつつ、会員がスムーズに生産活動を行えるよう情報提供していきたい」(武藤隆事務局長)と、サポートに注力する。
輸出伸びる。海外へ高精度品をいかに供給できるか
ダイヤモンド工具市場全体の生産動向を見てみる。経済産業省の生産動態統計調査の機械統計では、2015年の国内ダイヤモンド工具生産額が前年比1・0%増の701億4300万円、cBN工具は同5・4%増の253億7500万円。合わせて955億円規模の市場になっている。
これらの構成の多くを占める研削ホイール、切削工具などを中心に設備投資が活発な機械や自動車関連での需要拡大が近年の生産額を押し上げている。
また財務省の貿易統計では15年の輸出額が前年比6・9%増の504億円となっており、国内生産品の多くが輸出され海外で使われている。メーカーにとっては増える海外市場に高精度品をいかに提供していくかが今後の大きなテーマだ。
省エネや安全、超精密といった、時代が求める産業では、ダイヤモンドやcBN工具の役割はますます重要になるとみられる。それに合わせ、メーカーの製品開発と市場開拓が続けられている。