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“働きながら出産”が過去最高、調査で見えてきた現状と課題

働きながら出産した女性の割合が大幅に増えている。厚生労働省が公表した人口動態職業・産業別統計によると、2020年度に第1子を出産した女性のうち、有職だった人の割合は前回調査(15年度)から17・1ポイント上昇し62・9%と、1970年度の調査開始以来、過去最高となった。岸田文雄政権による異次元の少子化対策が進む中、子育てと仕事の両立が可能な支援策を手厚く拡充していくことも課題となる。

同調査は5年に1度、実施されている。第1子を出産した時に仕事を持っていた母親は、20年度が24万508人と、15年度の21万7650人から大きく増えた。第2子と第3子も過去最高だった。

一方、母親の職業別にみていくと、第1子では「専門・技術職」が前回から6・4ポイント上昇の22・8%、「事務職」が同4・6ポイント上昇の19・1%とともに大きく伸びた。第2子、第3子でもこの二つの職種が上位を占める。

共通するのは労働時間の管理が容易なこと。研究開発分野を含む「専門・技術職」では、自分で労働時間を決められる。一方、「事務職」は労働時間が短い場合が多い。両者とも女性が家庭で仕事の時間を確保でき、育児と両立がしやすい。

今後の課題は、他の職種に関しても家庭で働ける時間を確保すること。ニッセイ基礎研究所の乾愛研究員は「政府は育児に関連する取り組みを行う企業への支援を強化するべき」と指摘。企業の育児支援への積極的な取り組み事例を非財務情報として公表することを提案している。

一方で、「女性が働きやすい制度やキャリアパスの見直しなどが不可欠」(乾研究員)と強調。看護休暇だけでない独自の育児休暇制度の導入や、企業のキャリアパスがライフスタイルを阻害しないことの重要性に言及する。

ライフスタイルが多様化する中、育児の状況に応じたきめ細かい休暇制度も求められそうだ。個人の自律的なキャリア形成を尊重する仕組みを構築していく必要がある。

日刊工業新聞 2023年3月9日

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