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パナソニックが開発、5度Cで凍る氷利用「蓄冷システム」の仕組み

パナソニックは、5度Cで凍る氷を利用した蓄冷システムを開発した。氷の水分子のカゴ構造の中に分子を入れて氷を安定化する。融点を上げ、過冷却現象を抑えて氷を作る冷凍機の負荷を減らす。氷蓄熱に比べて消費電力を36%抑えられた。食品工場の低温加工などの冷却プロセスへの適用を目指す。

メタンハイドレートのように氷の結晶中に異分子が取り込まれた氷を作る。大小2種類のカゴ構造を作らせて安定化させた。すると氷が溶けにくくなる。2種類のカチオンと15種類のアニオンを組み合わせ、2―28度Cの間で融点を制御した。

これに銀を添加して氷の結晶を作りやすくし、過冷却現象を抑えた。融点7度Cの氷が5度Cで凍るようになる。通常の水は0度Cで溶けるが、凍らせるためにはマイナス5度Cが必要だった。凍結温度が上がると冷凍機の負荷を減らせる。

小型蓄冷槽で試験すると氷で冷熱をためるシステムに比べて、消費電力を36%抑えられた。水で冷熱をためるシステムに比べて蓄熱密度は大きくなる。

水に加えるカチオンなどは凍結と融解を繰り返しても劣化しない。設備投資は必要だが運転コストで回収できると見る。チョコレートや乳製品の低温加工や酒類の発酵温度管理、ビルへの冷熱供給などでの利用を想定する。

用途に合わせて融点を調整する。国内だけで原油換算で10万キロリットル分のエネルギーを減らすポテンシャルがある。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発事業で実施した。

詳細は27日にオンラインで開く成果報告会で解説する。


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日刊工業新聞 2023年02月22日

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