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ものづくり企業の営業パーソンが磨くべきスキルとは?

小さなものづくり企業の営業改革大作戦 #7
ものづくり企業の営業パーソンが磨くべきスキルとは?

アイキャッチイラスト:石山さやか(@shiya07)

小さなものづくり企業では、社長が営業や生産管理、生産技術などを幅広く担当しており、専任の営業担当者を置いていない会社が多い。また、営業部門がある場合でも、仕事の実態は既存客との納期調整や価格調整に限られる場合もあり、世間一般で言う「営業」とは異なる仕事をしているケースも多い。特に加工メーカーでは全体的に、営業人材が不足しているのだ。
 では、営業人材が圧倒的に足りない状態でこれから「営業」を強化したいと考えた場合、今いる社内の人材に営業寄りの仕事も依頼していくのが近道と考えられる。そこで、ものづくり企業の営業パーソンに求められるスキルを通して、どんな人が営業に向いているのかを考えてみたい。

 ものづくり企業の営業に向いている人は、ズバリ「技術的な素養がある人」だ。ということは、現場仕事から会社を立ち上げた創業社長も、設計一筋でやってきた設計者も、現場で加工や組立の経験を積んできたエンジニアも、むしろ営業に向いている。
 逆に他業界で実績のある営業パーソンをヘッドハントしてきても製造業ではなかなか成果が出ないケースが多いのも、ひとえにものづくりに関する基礎知識の有無が原因のひとつであると考えられる。

製造業のBtoB営業で求められるもの

ものづくり企業の顧客は同じものづくり企業であることが多く、そうでない場合も顧客はその製品のユーザーとして事情や機能に通じたプロフェッショナルであることがほとんどだ。このような場合、次のような営業はマイナスにしかならない。

流暢な営業トークでマシンガントークを披露しても警戒されるだけだ。「なんとしても今日、ここで受注をして成績を上げるぞ」と意気込むのも禁止。そうなると無理に売り込んで顧客から距離を置かれてしまい、進む話も進まなくなる。
 逆に製品・技術の知識があれば、なぜ顧客が時間を取って「話を聞きたい」と思ってくれたのか、その背景にある会社の課題や解決したいことは何か、同じ知識をベースに話して共有することができる。
 読者の皆さんも自分が発注する側にいるときは、「製品の機能が用件を満たしているか」「それで自社の課題が解決できるか」「費用対効果はどうか」「質問・疑問に対して的確な回答が得られるか」というようなことから発注可否を判断していることだろう。貴社の顧客も同じものづくり企業なのだから、きっと似たようなポイントを重視するはずだ。

ものづくり企業の営業パーソンが磨くべきは営業のスキルではなく、技術と製品に関する知識と、それを誠実に伝える能力だ。これなら、これまで真摯にものづくりに向き合ってきた職人さんやエンジニアの方が向いていて、無理なく実践できる営業スタイルといえる。

【POINT】
ものづくり企業の営業パーソンは
×営業トークを磨け
○製品・技術の知識を磨け

貴社の営業力の現在地がわかる簡単なチャートを用意してみた。ぜひ試してみてほしい。
【中小製造業向け】営業の現在地確認チャート

<著者紹介>
ものづくりライター 新開 潤子
『小さなものづくり企業の営業改革大作戦(日刊工業新聞社)』の著者であるものづくりライター。中小製造業を中心に取材活動を行いながら、「ものづくり企業の商売繁盛を全力で応援するサポーター」として経営計画、営業の仕組み導入などのコンサルティングを行っている。
(オフィス・キートス 代表 https://office-kiitos.biz/

小さな製造業の営業は「売り込む」ではなく「売れる仕組みを作る」が正解だった――激変する経営環境の中で「営業なんてしたことない」「営業マンがいない」というものづくり企業のための、ひとりからできる「営業」の打ち手集。

書名:小さなものづくり企業の営業改革大作戦
著者名:新開潤子
判型:B5判
総頁数:104頁
税込み価格: 2,035円
<販売サイト>
Nikkan Book Store
Amazon
楽天ブックス

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小さなものづくり企業の営業改革大作戦
小さなものづくり企業の営業改革大作戦
製造業の営業の現場で実践して新規顧客、売上を獲得してきた具体的な方法の中から町工場がすぐに取り組める内容を取り上げ、ひとりから始められる「売れる仕組み作り」の記事を連載でお届けする。

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