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国内唯一のレーザー核融合炉開発ベンチャー、技術実用化への現在地

国内唯一のレーザー核融合炉開発ベンチャー、技術実用化への現在地

阪大の大型レーザー実験装置「激光12号」

「夢のエネルギー」とも言われる核融合技術の実用化に近づいている企業が大阪にある。燃料が豊富に存在し、二酸化炭素(CO2)を排出しない核融合は持続可能なエネルギー源として注目を集めるが、社会的な理解が進まず、開発に必要な資金を得にくい側面がある。国内唯一のレーザー核融合炉開発ベンチャーであるEX―Fusion(大阪府吹田市、松尾一輝社長)は、研究で培った技術を産業分野に応用することで商用炉開発への理解促進を狙う。(大阪・大川藍)

EX―Fusionはレーザー核融合技術を用いた商用炉の実用化を目指す大阪大学発のベンチャー企業だ。阪大には50年の歴史を持つレーザー科学研究所があり、核融合技術開発でも先行する。EX―Fusionは阪大の大型レーザー実験装置「激光12号」を活用し、レーザー制御装置や燃料供給装置の開発を続ける。

核融合は核分裂と比較し、高い放射能レベルの使用済み燃料が発生せず、連鎖反応による暴走もないため高い安全性を持つといわれる。技術的課題が多く実用化には至っていないが、米ローレンスリバモア国立研究所が2022年12月に投入量を上回るエネルギーを得ることに世界で初めて成功するなど、技術は着実に進歩している。

実用化に必要な「レーザーの仕様はある程度見えてきた」と語るEX―Fusionの松尾社長

ただ、核融合技術の認知度は低く、商用化のスケジュールに不確定要素も多いため、開発資金を獲得するのは容易ではない。そこでEX―Fusionは核融合炉開発と並行して、レーザー技術の応用にも力を入れ、核融合技術の理解促進に取り組んでいる。

22年にはオーストラリア政府が支援する超高強度のレーザー施設開発プロジェクトへの参画を表明し、話題となった。松尾社長は「応用で成果を出さなければ、核融合炉を社会に認めてもらうところまでいかない」と見据える。

核融合炉開発は大きな資金を必要とする。同社は民間企業として応用で得た売り上げをレーザー核融合商用炉の開発研究に回し、より高度な光技術を獲得する好循環を生み出すことで、スピード感のある開発につなげたい考えだ。

実用化に必要な「レーザーの仕様はある程度見えてきた」(松尾社長)といい、29年の技術実証と35年のパイロットプラント建設を目指す。25年に開催される大阪・関西万博も活用し、「脱炭素社会で光る大阪発の技術をアピールしたい」(同)考えだ。

日刊工業新聞 2023年02月15日

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