出荷台数24年ぶり6万台超、「バイクブーム」が起きている背景
2輪車人気が続いている。特に趣味性が高い大型車の需要が増えており、日本自動車工業会(自工会)のまとめによると、2022年における排気量251cc以上の2輪車の出荷台数は前年比23・1%増の7万1606台。6万台を超えたのは、1998年以来24年ぶりだ。背景には、コロナ禍で「密」を回避して楽しめる手段としてのニーズがある。加えて会員制交流サイト(SNS)の普及で、“映え”の手段としても注目されている。業界にはこの追い風を一過性に終わらせないための取り組みが求められる。(江上佑美子)
ライフスタイルギア(道具)ブーム―。自工会は昨今の“第12世代バイクブーム”をこう位置付ける。自工会がまとめた21年の2輪車の出荷台数は前年比15・3%増の37万8720台で、4年ぶりに増加。22年は部品不足の影響もあり同4・4%減の36万2082台とマイナスに転じたが、需要自体は堅調だ。
自工会は今回のブームについて、過去のブームとは性質が異なると分析する。従来はバイクが主役で“憧れのバイク”を購入してから何をするかを決める人が多かったが、今回は自分の趣味にバイクを結びつける人が多いと見る。キャンプなどの移動手段に用い、その様子をSNS「インスタグラム」などに投稿。目にした人が2輪車を身近な存在として認識する流れが生まれている。
ただし明るい材料ばかりではない。目下の課題は20年排ガス規制だ。欧州の排ガス規制「ユーロ5」と同様に2輪車が排出する窒素酸化物(NOx)などの規制値を強化する内容で、20年に全ての新型車、22年11月に原付き第1種を除く継続生産車に適用された。メーカーにとっては触媒や開発に関するコスト増が負担としてのしかかる。同規制対応を理由に、一部車種の受注を停止している状況だ。
また大型車人気の一方、苦戦しているのが排気量50cc以下の原付き第1種だ。出荷台数は30年前の2割以下、10年前と比べても約半分だ。原付き第1種の特徴は安価で普通自動車免許で乗ることができるといった手軽さだが、電動アシスト自転車の普及などでその魅力は薄まりつつある。 小型車はコスト増の影響が特に大きいとの理由で延期されている継続生産車への20年排ガス規制適用についても、25年11月には対象となる。「特に地方には原付き第1種を必要としている人がいる中、自工会としては捨てるわけにはいかない。規制をクリアする内燃機関の開発や電動化シフトなど各社が戦略を練っている」(自工会二輪車委員会の日高祥博委員長〈ヤマハ発動機社長〉)。
業界に求められているのは、ブーム持続に向けた施策だ。自工会は駐輪場不足の解消を課題に位置付ける。自工会の調査ではユーザーの6割以上が駐車場不足に不満を感じている。過去のブームの際には路上駐車が増え、06年の改正道路交通法施行で取り締まりが強化されてブーム終息につながった。自工会は自治体などと連携し、インフラの整備を働きかけている。
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