超電導量子ビットセンサーで神経細胞の鉄イオン検出、NTTなどが成功した意義
NTT物性科学基礎研究所の樋田啓主任研究員と齊藤志郎上席特別研究員、静岡大学の小野行徳教授らは6日、超電導量子ビットセンサーで神経細胞の鉄イオンを検出することに成功したと発表した。鉄イオンの電子スピンが作る磁化を捉えた。約20スピンあれば検出できる感度があるため、細胞一つひとつに含まれるイオンの種類や量、酸化還元状態を可視化できるようになる。医学・生命科学研究の強力なツールになる可能性がある。
超電導量子ビットを微弱な磁場の計測に利用する。量子ビットの上に絶縁体のパリレン上に固定した神経細胞を配置して金属イオンの電子スピンを計測する。外部磁場や温度を変化させるとスピンの向きのそろい具合が変化する。これを磁化として捉える。
実験では温度が低く、外部磁場を強くするほど磁化が大きくなった。この磁化の要因を調べると3価の鉄イオンが大きく影響していた。計測範囲は約10マイクロメートル(マイクロは100万分の1)。一つの神経細胞に含まれる鉄イオンを捉えたことになる。価数からイオンの酸化還元状態が分かり、生体内で働きを推定できる。今後、量子ビット集積して画像撮影を目指す。
日刊工業新聞2023年2月7日