「人を増やさなくても意欲を変えるだけで成果は変わる」…イトーキが挑む多様な働き方
イトーキは今やるべき二つの重要課題を設け、その下に計10のテーマを設定した。重要課題のひとつは「社会と人々を幸せにする」こと。オフィス家具メーカーとして、世の中の人々にとって魅力的な働き方や働く場所を創造し、カーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)に貢献することも掲げた。
重要課題のもうひとつは「会社と社員が幸せになる」こと。社員の健康を守り、成長を促し、多様な人財が働きやすいオフィスを作る。制度改定やペーパーレス化の推進により、働きやすい環境を整え、ディーセント・ワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を浸透させる。
同社は7月にテレワーク勤務制度を改定した。自宅だけでなく、実家やワーケーションの宿泊施設など、社員が選択した場所を「マイプレイス」と定義。経費や労働災害などに対応する規則を設けることで、自由な働き方を促す。山村善仁執行役員は「人を増やさなくても、意欲を変えるだけで成果は大きく変わる。その一つとして多様な働き方に挑戦する」と話す。
働きやすい環境を整えるため、社内業務デジタル変革(DX)担当役員の設置や、一部の工場従事者を除く従業員へのノートパソコンやタブレット端末の配布も実施。働き方で最も大きく変化したのは、社内のペーパーレス化だという。
「ペーパーレス委員会」を設置し、通常の業務で扱う資料だけでなく、経営会議など重要な場で用いる資料も電子データに切り替えるように役員が先頭に立って働きかけた。切替が不可能と思われていた図面を扱う部署でも、複数のモニターを使うなど工夫し、ペーパーレス化を進めた。
18年に移転・集約した本社の「イトーキ・トウキョウ・ゾーク」では従業員が自由に席を選んで働く。ペーパーレス化の浸透により、従業員は身軽に活動できるようになり、また個人が使うロッカーも小型化できた。
「イトーキは働き方を提供する会社。そのため、社員がどう働くかが重要」(山村執行役員)。一歩先の働き方を実践することで、顧客への製品・サービスの提供価値をも高めていく。