中国生産→兵庫に移管、パナソニック系が産業用モーター国内回帰の背景事情
パナソニックインダストリーは2023年春に産業用モーターの量産立ち上げを中国・珠海工場(広東省珠海市)から兵庫県たつの市の工場に移管する。工場自動化(FA)ニーズなどで高性能モーターの需要は広がる一方、事業環境の変化が激しい。同社は約20年前に産業用モーターの生産を日本から中国へ全量移管したが、国内回帰することで新製品の市場投入までのリードタイム短縮や事業継続計画(BCP)強化につなげる。
パナソニックインダストリーの小型産業用モーターはロボットや半導体製造装置の駆動部に使われ、中国のFA設備向けでシェアトップクラス。生産性を従来比5割以上高めた製造設備を兵庫県たつの市の既存工場に新設し、23年春に次世代産業用モーター「MINAS A7」の量産を始める。同工場では現在、FAセンサーなどを手がけている。
「小型で応答が速いなど機械的に難しい性能が求められる。(開発拠点から)離れた場所で指示し生産を立ち上げるのは難しい」(坂本真治パナソニックインダストリー社長)ことから、新製品の量産立ち上げを日本に戻し、生産技術や品質を安定させた上で海外に生産プロセスを展開する体制に切り替える。
パナソニックインダストリーは00年ごろに経営が厳しくなり、産業用モーターを中国に、機能性コンデンサーの生産をインドネシアと中国にそれぞれ移管した。ただ「進化のスピードが緩慢になった」(坂本社長)ため、機能性コンデンサーは4―5年前に佐賀県や熊本県の拠点に回帰した経緯がある。
今後も材料、開発、生産など各技術の緻密な制御が製品精度を左右する製品について、同様の形を模索する。
中国を中心にFAニーズや設備の高度化が進み、モーターやモーター制御を担うアンプの市場は拡大傾向とみる。産業用モーターを含むFAソリューション事業について、30年度に事業規模を3100億円(21年度比約2倍)に引き上げる。
【関連記事】 パナソニックグループが頼りにする異能の変革集団