日立金属子会社が実現、スゴい「水素吸蔵合金」の全容
三徳(神戸市東灘区、角田達彦社長)は、ニッケルやコバルトなどを使わない低コストな水素吸蔵合金を開発した。従来は加工が難しかったチタンと鉄の合金で実現。水素吸蔵合金は水素を気体状態と比べ1000分の1以下に体積を圧縮して貯蔵でき、漏えいの危険性も低い。比較的低圧で貯蔵可能で、住宅街やオフィスでの水素利活用に適している。顧客ニーズを取り込み、国内での量産体制整備を目指す。
粉砕加工しやすいチタンと鉄の合金の製造方法を独自開発したことで、ニッケルやコバルトなどを使う一般的な従来品と同等コストで加工可能となった。
チタンと鉄による水素吸蔵合金は、高硬度で粉砕加工コストがかさむため、これまで製品化が難しかった。チタンは、ニッケルやコバルトなどと同じくレアメタル(希少金属)だが、品種によっては調達コストが比較的安い。それを独自方法で加工することで適切な価格で製品化できる見通しが立ったという。
合金重量単位当たりの水素吸蔵量が、ニッケルやコバルトなどを使う場合より、2―3割高いのも特徴だ。
三徳は既に、従来型の水素吸蔵合金を原材料調達が可能な中国子会社(内モンゴル自治区)で量産している。今後は顧客ニーズをさらに取り込み、チタンと鉄による水素吸蔵合金を事業化して、三木工場(兵庫県三木市)など日本でも量産体制を整備する方針だ。
水素の貯蔵は、高圧ガスや液体水素の状態にする方法が一般的だが、容器劣化などの対応が不可欠。アンモニアやメチルシクロヘキサン(MCH)などの形にした貯蔵方法も、取り扱いが難しい。
一方で水素吸蔵合金は、水素原子が結晶格子間に侵入して金属水素化物を生成するため、漏えいなどの危険性が低く、法規制も少ない。
もともと水素吸蔵合金は、ニッケル水素電池の負極材を中心に実用化が進んだ。だが近年、水素社会実現の観点から水素貯蔵の側面に注目が集まり、開発競争が加速。三徳は競合他社よりも、低コストかつ高性能を実現できると見込む。
三徳は日立金属の子会社。ネオジム磁石合金の製造販売が売上高の約8割を占める。
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