トヨタ車運搬に活用、トヨフジ海運が「LNG燃料船」初投入へ
トヨフジ海運(愛知県東海市、武市栄司社長)は液化天然ガス(LNG)燃料の自動車運搬船2隻を建造する。造船所は三菱造船(横浜市西区)とみられ、2025年をめどに竣工する。重油を使う現状の運搬船と比べ、25%ほど二酸化炭素(CO2)排出量を削減できる見通し。トヨフジ海運はトヨタ自動車向けの取り扱いが約7割を占める。トヨタは50年までにサプライチェーン(供給網)全体のCO2排出量をゼロにする目標を掲げており、海上輸送でも脱炭素化に向けた動きを加速する。
車両3000台積みの外航船2隻をアジア航路などに投入する予定。1隻当たりの投資額は数十億円とみられる。トヨフジ海運は20隻の外航船を保有するが、LNG燃料船を導入するのは初めて。同社にはトヨタが50%、フジトランスコーポレーション(名古屋市港区)が33・3%、トヨタ輸送(愛知県豊田市)が16・7%を出資し、年230万台の海上輸送を取り扱っている。
自動車業界では欧州メーカーがCO2排出量を調達の条件にするケースが出始めるなど、取引先へのカーボンニュートラル(温室効果ガス排出量実質ゼロ)要求を強めている。トヨタは調達要件に脱炭素化を盛り込んでいないが、供給網全体でCO2排出量をいかに減らしていくかは重要テーマとなる。
トヨフジ海運は30年に19年比で30%のCO2削減目標を掲げる。バイオ燃料と重油を混ぜたバイオディーゼル燃料を使って試験運行を実施するなど、積極的に取り組んでいる。
当面、内航船はバイオ燃料に転換し、外航船はLNG燃料船を軸にCO2排出量の低減に取り組む方針。老朽船の更新時に新燃料船に切り替えるなどで達成を目指す。水素やアンモニア燃料も視野に入れ、燃料供給インフラやコスト、技術動向を注視しながら導入を検討する。
一方、三菱重工業グループの三菱造船は下関造船所(山口県下関市)でLNG燃料自動車運搬船を建造する模様だ。同社はLNG燃料ガス供給システム(FGSS)のエンジニアリングを手がけるなどガスハンドリング技術を得意としており、商船三井向け国内初のLNG燃料フェリーも建造している。
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