容器「紙化」、跳ね上がる環境コストどう抑えるか
紙パックは紙のほかプラスチック、アルミニウム箔などの複数の素材を貼り合わせて形作る。容器自体をガラス瓶やプラスチック容器から「紙化」しても、その構造や製造過程は手放しで喜べない複雑さを伴っている。
メーカー各社にとってプラスチック削減やリサイクル性の向上、二酸化炭素(CO2)排出量低減は差し迫った課題だ。目下、表面に防水コーティングするプラスチックを植物由来の素材に転換したり、アセプティック(常温)容器は酸素や水蒸気などへのバリアー性に使うアルミを使わないようにしたりと、大きく舵(かじ)を切ろうとしている。
日本テトラパック(東京都港区)は植物由来のキャップの導入を手始めに、2023年春からの植物由来コーティング材の投入、24年からのノンアルミ材料の投入を予定する。先行する本拠地、欧州の取り組みを日本に“移植”する形だが、同社は「一律転換というより、顧客が選べるように複数準備する」と言う。
環境配慮型の紙パックは一部の青汁、野菜ジュースなどで利用されている。日本製紙が投入したノンアルミのアセプ容器「ノンアルミフジ」は、従来比で生産時のCO2排出量を約18%削減。二つのポリエチレンに挟まれていたアルミ箔の部分をバリアーフィルムに置き換えた。
パッケージ業界の大手はプラスチック素材や印刷技術の知見やノウハウが豊富だ。凸版印刷の「GL BARRIER」、大日本印刷の「IB―FILM」は透明バリアーフィルムの代表で、自社包材に使うほか他のメーカーに材料として供給する。
さらにリソースを高めようと、大日本印刷はスイスのSIGコンビブロックと協業している。一押し商品の「SIGNATURE EVO」はCO2排出量を27%削減し、アルミレスながら、香りや光などに対する「フルバリアー」を可能にした。
環境対応を図ってきた企業同士で「相乗効果が見込め、25年度には国内アセプ市場のシェア1割を獲得したい」(木下善文Lifeデザイン事業部APセンター長)という。
紙パックと内容物を詰める充填機は対の関係だ。テトラパックは自社完結型をとり、日本製紙が四国化工機(徳島県北島町)と高粘度飲料向け「NSATOM」を開発するなど各社で連携は深まる。
脱炭素、減プラに向け、従来機能を保つ代替材が注目される。ただ選択肢を広げつつソフトランディングを図ることが重要だ。跳ね上がる環境コストをどう抑えるかは関係者の腕の見せ所といえる。