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宇宙輸送実現へ、JAXAが挑む革新的プログラムの今

宇宙輸送実現へ、JAXAが挑む革新的プログラムの今

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米国中心の月周回有人拠点「ゲートウェイ」などの月面開発や、衛星コンステレーションを利用した通信など、世界の宇宙開発・宇宙利用は拡大を続けており、宇宙活動の基盤となる宇宙への輸送産業は、2040年代には10兆円規模になると推測されている。このような背景から、世界的に宇宙輸送に挑戦する企業が増えてきており、JAXAでも、将来の宇宙輸送システムの実現のため官民一体となって進める革新的将来宇宙輸送プログラムを開始した。

本プログラムでは、20年後半のサブスケール飛行実証を経て30年ごろに基幹ロケット発展型の初号機打ち上げ、また、40年前半の高頻度往還飛行システムの実現を目指している。

民間企業の参入により、宇宙輸送費の低コスト化が進んでおり、宇宙輸送システムの開発においては、高性能、高機能だけでなく、いかに安く、高頻度に輸送を行うかがテーマとなってきている。その低コスト化、高頻度打ち上げの手段として重要なのが機体の再使用化である。

機体を繰り返し使用することで打ち上げ費を下げる試みだが、そのためには、機体を地上に帰還させる技術、機体を回収するシステムの構築、回収した機体を効率よく点検・再整備する技術など新たに獲得すべき技術が多くある。JAXAでは、機体の再使用を実現するために、これらの研究開発に積極的に取り組んでいる。

本プログラムでは、新しい技術を獲得する活動として、オープンイノベーションにも取組んでいる。将来の宇宙輸送に向けた技術課題を設定し、広く非宇宙の企業、大学などからアイデアや新たな技術を募集し、協力して研究開発を進めており、現在までに36件の研究提案を採択し、共同研究を開始している。

本活動では、これまで宇宙開発に携わってこなかった方たちの宇宙産業への進出や、JAXAとの技術開発による新たな事業展開を期待するとともに、将来宇宙輸送の実現に繋がる要素技術を獲得していきたいと考えている。

日本の宇宙輸送における国際競争力を獲得すべく、産学官が一丸となって戦略を作り、技術獲得を推し進めていく。多くの国内企業・大学のご協力を頂きながら、将来の魅力ある宇宙輸送を目指していきたいと考えており、ぜひ応援と積極的な参加をお願いしたい。

研究開発部門 第四研究ユニット 主幹研究開発員 桜井康行

JAXA入社後、H―ⅡA、イプシロンのロケット開発・運用に従事。主な専門分野はロケットの飛行解析、飛行安全。昨年度から革新的将来宇宙輸送プログラムにおける共創体制活動や自律飛行安全の開発に取り組んでいる。
日刊工業新聞 2022年11月07日

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