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エネルギー価格高騰で業績悪化、非鉄業界に影落とす

エネルギー価格高騰で業績悪化、非鉄業界に影落とす

製錬設備などでは、電気代など操業コストが大幅に増加している

エネルギー価格上昇による業績悪化が、非鉄金属業界に影を落とす。

銅など金属価格の上昇や電子材料・自動車関連製品向け販売の増加などを追い風に、非鉄金属大手7社(経常損益を公表していないJX金属を除く)の2022年3月期連結決算は、前期に比べて全社が増収経常増益で、一部の企業は過去最高益を達成する好業績だった。

だが、インフレ抑制で、米連邦準備理事会や欧州中央銀行が相次ぎ大幅な利上げに踏み切ったため、世界経済の景気後退懸念が強まり、銅などの金属価格が下落。それまでは、欧米などでコロナ禍による移動制限が解除する動きが顕著になり、5月下旬以降に銅価格が上がり始め、6月初旬には一時トン当たり9700ドルまで上昇した。だが利上げ発表以降、実体経済の減速観測から、6月下旬に同9000ドルを割り込み、7月下旬には同7300ドル近辺に大きく下落した。中国のゼロコロナ政策緩和への期待から11月下旬には同7900ドルへ上昇に転じるなど、実体経済の動きを敏感に反映した相場展開を続けている。

利上げなどの影響は材料・加工品など製品にも及ぶ。半導体不足のなか自動車産業向け製品の生産低迷が長引き、好調な電子機器用半導体向け材料も22年度第1四半期(4―6月)から需要に陰りが見え始めた。小野直樹三菱マテリアル社長は「世界的な景気後退懸念は23年度末まで厳しい状況が続くだろう」との見方を示す。

さらに、ウクライナ問題でエネルギーが価格上昇。製錬などのエネルギーコストの増加が国内非鉄各社の利益を押し下げる最大の要因になっている。電力逼迫(ひっぱく)も大きな懸念材料となっている。経済が低迷する中国は都市部のロックダウン(都市封鎖)などコロナ対策を堅持していたが、国民からの反発もあり緩和の方向に動きつつある。非鉄業界の業績回復はエネルギーの安定調達と最大の消費量国である中国経済の回復がカギになりそうだ。

日刊工業新聞 2022年12月8日

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