東大などが火山ガスからマグマ活動変化を捉えた意義
東京大学の角野浩史教授らは、火山噴気孔から放出される火山ガスの分析によりマグマの活動変化を捉えることに成功した。火山ガス中の希ガス同位体組成がマグマの変化を反映して変動することを示した。大量のマグマ上昇を伴わない水蒸気噴火が主体の火山では初めて。従来の地震や地殻変動観測では分からなかった地下深部のマグマ活動のわずかな変化を捉えられるようになる。噴火の前兆活動の監視手法として応用が期待される。北海道大学、東京工業大学、東海大学との共同研究。
群馬県の草津白根山周辺の噴気孔から火山ガスを2014年から21年まで数カ月おきに採取し、含有成分の濃度と同位体組成を分析した。
このうち、マグマに由来し、化学反応を起こさないヘリウムとアルゴンの同位体比を指標にすることで、マグマ中に気相がどれだけあるかを示すマグマ発泡度の変化を求めることができた。マグマ発泡度が増加すると、同位体比が上昇する。
草津白根山ではこの同位体比が大きく変動し、同位体比が高く発砲度が高まっていた時期にはマグマガス供給量も増加していた。一方、火山活動が落ち着いていた時期には同位体比は低かった。
マグマには揮発成分が溶け込んでおり、気体としてマグマから分離する。この気体の組成からマグマ発泡度を推定できることが知られていた。
しかし、噴気孔から放出される火山ガスは、マグマガスが地表に到達するまでに水や大気の混入、岩石などとの化学反応の影響を受けてしまう。
今回、安定同位体比の変化などを考慮することで水や大気由来の成分を正確に補正し、マグマ起源の同位体濃度測定を実現した。
日刊工業新聞 2022年11月22日