増加に転じた「自動車用フィルム・シート出荷量」、これから期待される市場は?
矢野経済研究所は自動車用フィルム・シート市場の調査結果をまとめ、2023年の自動車用フィルム・シートの出荷量は22年見込み比5・8%増の1億4530万平方メートルと拡大基調で推移すると予測した。21年以来2年ぶりに前年比で増加に転じる。22年下期より中国のロックダウン(都市封鎖)が解除されたことなどから、自動車生産台数は回復に向かっており、フィルム・シートの需要も連動して高まるとみる。
22年の出荷量は前年比1・3%減の1億3734万平方メートルとなる見通し。世界の自動車生産の3割強を占める中国でのオミクロン株流行に伴い都市部でロックダウンが実施され、生産・物流が停滞した。ロシアによるウクライナ侵攻の長期化や米国の金利上昇による欧米市場の消費冷え込みの影響もあった。
21年の市場規模は1億3912万平方メートル。内訳は、内装用加飾フィルムが1170万平方メートル、外装用加飾フィルムが428万平方メートル、ウインドーフィルムが320万平方メートル、合わせガラス用中間膜が1億1920万平方メートル、車載ディスプレー前面板用樹脂シートが73万平方メートルだった。
今後は電気自動車(EV)の普及拡大や安全性向上を背景に、合わせガラス用中間市場の伸長が期待される。足元では走行時の騒音抑制を実現する遮音膜や、ヘッドアップディスプレー(HUD)用くさび型中間膜を中心に機能膜の需要が増加している。
また、コネクテッドカー(つながる車)や自動運転車といった次世代車両や、環境対応領域への参入も市場開拓につながるとみている。
日刊工業新聞 2022年11月16日