10数万KWを実現へ、「超臨界地熱発電」貯留層の構造探る
火山深部のマグマ・マントル由来の400度―500度Cの地熱で10数万キロワットの大規模発電を実現する「超臨界地熱発電」の構造試錐井(しすいせい)の開発が2024年度にも始まる。次世代の再生可能エネルギーとして新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が国内4エリアで進める資源量評価を踏まえ、30年までに構造試錐井から調査井の掘削、50年ごろに大規模発電の実現を目指す。
NEDOは国のグリーンイノベーション戦略にも盛り込まれた超臨界地熱発電技術の開発を18年から開始。現在は資源量評価と試掘の段階だ。日本の超臨界地熱資源のポテンシャルは1200万キロワット程度で、東北、北海道と九州地域に多く存在するが、優先調査する有望地域として岩手県の八幡平と葛根田、秋田県湯沢南部、大分県九重の4地域を選定。地熱開発企業や研究機関、大学、団体がチームを組み資源量評価や掘削工程の策定などを進めている。
NEDOでは23年度末に構造試錐井の候補地を決め、24年度以降に掘削に入る計画。調査井掘削の前に構造試錐井で超臨界地熱貯留層の真上の地下3000メートル前後まで掘削し、地質構造や温度の状態を把握、掘削、資機材、モニタリング装置の評価も行う。
福島再生可能エネルギー研究所(FREA、福島県郡山市)をリーダーとするグループは葛根田地域での超臨界地熱資源量評価で、超臨界地熱貯留層が存在する可能性が極めて高いことを明らかにした。
既存の葛根田地熱発電の貯留層より深い地下3000メートル以深の花崗岩の上部に超臨界領域がある可能性が高く、4本の井戸と1本の還元井で40年以上安定して10万キロワットを発電するシミュレーションも得た。
FREAでは同地域での開発による浅部地熱系への直接の影響は極めて少ないとみている。
23年度末の構造試錐井掘削では、350度C程度の花崗岩の上部まで掘削に入る。FREAの浅沼宏再生可能エネルギー研究センター副研究センター長は「構造試錐井は米国が行った月面探査のアポロ計画に例えると、月面ロケットを飛ばす1歩前の予備ロケットが完成した段階」と話す。構造試錐井の掘削費は1本当たり数10億円かかる見通しとみられ、調査井掘削は26年度以降、実用化開発は30年度以降になりそうだ。
NEDOによると有望と見られる4地域ではこれまでの調査で資源賦存を推定できており、まずまずの進捗(しんちょく)状況という。構造試錐井は23年以降にまず1カ所で掘削する計画だが、調査井ではボーリングの資機材は変わる見通しで、適切な材料開発も進める。NEDOの大竹正巳新エネルギー部熱利用グループプロジェクトマネージャーは「30年代以降に国内数カ所で実証試験を行い、50年前後に事業化を見込む。1本の井戸で発電規模は1万キロワット以上を期待しており、1地域での規模は10数万キロワットを目指す」としている。