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小惑星「リュウグウ」500万年前に近地球軌道へ移動、JAXAなど解明

宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、小惑星「リュウグウ」が約500万年前に近地球軌道に移動したことを明らかにした。小惑星探査機「はやぶさ2」で採取したリュウグウの試料から、太陽系外を起源とする放射線「宇宙銀河線」によって生成された希ガスを検出。照射時間を算出することでリュウグウが現在の軌道に移動した時期が分かった。母天体からリュウグウが形成される機構の解明につながると期待される。

東京大学や九州大学などとの共同研究。成果は21日、米科学誌サイエンス電子版に掲載された。

直径約1ミリメートル弱の試料をプレス加工し、真空中で段階的に加熱してガスを抽出した。試料には太陽系形成時の始原的な希ガス同位体が含まれており、これまでに地球上で発見された同種の隕石に含まれる量よりも2―3倍多いことが分かった。

また、銀河宇宙線由来と太陽風起源の2種類の希ガスを抽出。銀河宇宙線由来の希ガスはリュウグウの表面から採取した試料と内部の試料の両方から得られたが、太陽風起源の希ガスは小惑星の表面で採取した試料にしか含まれなかった。希ガスの分析からリュウグウの表面と内部に対する放射線の影響の違いを見いだせた。

これまでのリュウグウ表面のクレーターの観察から、小惑星の軌道が移動したのは200万―800万年前であるという説と、10万―30万年前だという仮説の二つが立てられていた。だがどちらが正確かは分かっていなかった。

日刊工業新聞2022年8月21日

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