ニュースイッチ

大容量・高速通信が可能、住友電工が開発したスゴい「GaNトランジスタ」

住友電気工業は第5世代通信(5G)後の大容量・高速通信を可能とする高周波増幅器用の窒化ガリウム(GaN)トランジスタを開発した。通信機器のトランジスタを高出力・高周波化し、データ伝送量を増やせる。住友電工は5G基地局用半導体の大手。高周波通信を高度化し、省エネルギーや脱炭素の技術競争力を強める。

開発したのはGaN結晶にN極性を、ゲート絶縁膜に業界初のハフニウム(Hf)系高耐熱高誘電材料を適用したトランジスタ。GaN結晶はGa極性が一般的だが、高出力・高周波化では素子設計の自由度が高く、漏れ電流を抑制できるN極性による特性改善が注目されていた。

だが、N極性結晶は異常成長部による凹凸が発生しやすく、住友電工は結晶成長技術で凹凸をなくした。素子設計では従来の半導体バリアー層に代わり、ゲート電極のバリアーとなる良質なゲート絶縁膜も必要だった。そこで同絶縁膜に最先端のシリコン(Si)トランジスタで使われるHf系高耐熱高誘電材料を初めて適用した。この結果、高誘電材料によるN極性結晶のトランジスタで良好な高周波特性を達成した。

GaNトランジスタは5Gに代表される高周波増幅器に使われている。5G後の大容量・高速通信に向け、高出力・高周波化が求められている。住友電工は開発したトランジスタを、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託事業として手がけた。

日刊工業新聞2022年10月19日

編集部のおすすめ