イリジウム10分の1で生産効率500倍、東芝が水素製造で新技術
東芝は水素をつくる水電気分解装置の電極製造に使うイリジウム(Ir)の量を従来の10分の1に抑える技術について、生産効率を約500倍向上した。大型の成膜スパッタ装置を使い、従来比約500倍の5平方メートルの膜を一度につくれる。水電解装置メーカーによる評価を始めており、2023年度以降に電解質膜と電極を一体化した膜電極接合体(MEA)として製品化を目指す。
東芝はスパッタ技術により、酸化イリジウム(IrO2)を均一に分散したナノメートル台(ナノは10億分の1)の薄膜を形成することで、従来の塗布方式よりもIrO2使用量を10分の1に抑えながら82%の水電解効率を維持する技術を2018年に開発済み。ただ、一度に成膜できる面積が100平方センチメートルで、生産効率の向上が求められていた。
水素は再生可能エネルギーを貯蔵・運搬する手段として注目されており、水を電気分解して水素をつくる電解装置の需要は、脱炭素社会の実現に向けて大きく増える見通し。一方、水電解方式の一つである「固体高分子膜(PEM)水電解」は希少金属のIrを電極用触媒に使うため、Ir使用量の削減が課題になっている。
東芝は今回の生産技術で「出力200キロワット弱の水電解装置1台分の電極用触媒層を1度に成膜できる」とし、発電容量1メガワット(メガは100万)を超えるメガソーラー太陽光発電所の出力変動の調整に貢献する技術と位置付けている。
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日刊工業新聞2022年10月7日