サントリー工場をゼロカーボン化、山梨県などが設置する水電解装置の仕組み
山梨県、東レ、東京電力ホールディングス(HD)など9者のコンソーシアムは5日、サントリーホールディングス(HD)の白州工場(山梨県北杜市)に固体高分子(PEM)型水電解装置で水素を生成するパワー・トゥ・ガス(P2G)設備を設置すると発表した。PEM膜を用いた高効率の水電解装置で生成する水素を燃料として同工場に供給し、ゼロカーボン化する。総事業費約140億円のうち100億円を補助金で賄い、残りはコンソーシアムが出資する。2024年末の導入を目指す。
山梨県企業局と東レ、東電HDは甲府市の米倉山電力貯蔵技術研究サイトで、出力1万1000キロワットの太陽光発電(PV)で生産するグリーン電力により1日340立方メートルの水素を生成する水電解装置を運用している。サントリー白州工場のP2G設備は米倉山サイトの10倍で、国内最大の1万6000キロワット規模となる見通し。水素製造はフル操業で年間2200トンを見込む。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のグリーンイノベーション基金事業に採択されている。
サントリーHDは5日、山梨県と環境調和型の持続可能な社会実現に向けて基本合意書を締結。サントリーHDの小野真紀子常務執行役員は「グリーン水素の活用で環境負荷の少ない商品を届けるとともに、水素技術の開発や地域の脱炭素に貢献したい」と述べた。
白州工場では蒸留や滅菌などに必要とする大量の熱を作る燃料を天然ガス(LNG)から水素に置き換え、カーボンゼロを目指す。コンソーシアム名は「やまなし・ハイドロジェン・エネルギー・ソサエティ(H²―YES)」で、山梨県企業局、東電HD、東京電力エナジーパートナー、東レ、日立造船、シーメンス・エナジー、加地テック、三浦工業、ニチコンが参画する。使用する電力は隣接する北杜市のPVをクレジット制度などを通じ、グリーン電力として導入する。
新たなP2G設備は福島県浪江町の福島水素エネルギー研究フィールド(F2HR)の水電解装置(出力1万キロワット)を上回る規模となる。