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放熱性はアルミ並み、スゴいマグネシウム合金

産業技術総合研究所のビャン・ミンジェ研究員と千野靖正研究グループ長、名古屋大学の小山敏幸教授らは、放熱性がアルミニウム並みで成形性に優れたマグネシウム合金を開発した。マグネシウムに微量の銅とカルシウムを加える。結晶の粒界に共偏析して結晶の配向が乱れて成形性が向上した。電子機器の放熱ケースなどの軽量化に提案していく。

マグネシウム板材の結晶配向模式図

金属マグネシウムに0・03%の銅と0・05%のカルシウムを添加する。鋳造で元素を混ぜ、圧延成形で合金の板材を作製した。カルシウムの添加で耐食性が向上し、塩水腐食試験では腐食速度が1日・1平方センチメートル当たり1・79グラムと、カルシウムを加えない場合に比べて23分の1になった。

熱伝導率は1メートルケルビン当たり157ワットと汎用マグネシウム合金の約2倍でアルミニウム合金に匹敵する。室温成形性は汎用マグネシウム合金の約2倍。これは銅とカルシウムが共偏析し、結晶が幅広い方向を向くようになったため。粒界での共偏析は理論計算と組織観察で確認できた。

ごく微量の元素添加で金属組織を制御し性能を向上させた。マグネシウムの比重はアルミの3分の2と軽い。

日刊工業新聞2022年10月3日

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